詩人金子みすゞ(1903~30)の生涯を劇団若草の創始者である弟・上山雅輔の目を通して描いた伝記小説である。著者は雅輔の70年分の日記と回想録を読み込んで執筆した。

 大正デモクラシーを背景に「こだまでしょうか」「私と小鳥と鈴と」などの詩作に打ち込むみすゞ。一方、幼くして養子に出された雅輔は、みすゞのことをいとこだと思い、文学を語り合うなかで恋人のように慕っていく。その後、みすゞは姉であることを弟に伝えて別の男性と結婚。4年後に離婚を決め、服毒自殺した。雅輔は姉を救えなかった自責の念にかられたが、姉の作品を伝えていくことと、自らも創作することで立ち直っていく。

「昭和の喜劇王」古川ロッパが登場し、北原白秋や西條八十の詩がちりばめられるなか、二人の青春の日々が鮮やかによみがえる。

週刊朝日  2017年7月28日号