山口組4代目組長竹中正久の実弟で超武闘派で鳴らした竹中武の評伝だ。

 昭和60年に正久が射殺され、お家騒動に発展した「山一抗争」の政治的決着に不満を持った武は山口組を離脱。山口組の激しい切り崩し工作にあい、組員が2千人から数十人規模に激減しながらも、敵の首を狙い続ける。

「ごじゃ」とは播磨地方の方言で無理、無茶を意味する。ロケット弾を厳戒態勢の敵の自宅にぶち込ませるなど、本書は武の「ごじゃ」の振る舞いにあふれている。

 とはいえ、彼を駆り立てたのは復讐の思いからではない。法的な締め付けが厳しくなり、多くのヤクザが長いものに巻かれるようになる中、「筋を通す」ことを最後まで貫いたのだ。今、山口組は再び分裂状況にある。武にはどう映っているのだろうか。

週刊朝日  2017年6月16号