毎年4月に京都の祇園甲部歌舞練場で「都をどり」を披露する井上流。五世家元の八千代が祇園の四季をはじめ、家のことや祖母の四世のことなどを語った。

 父親が観世流の能楽師である片山家に生まれた。代々、男は能、女は京舞を継ぐ家だったが、母親が酒屋から嫁いで来たため、祖母から舞の手ほどきを受ける。年の近い十八代目中村勘三郎や十代目坂東三津五郎の存在が心の支えだった。観世銕之丞と結婚し、夫は東京、自身は京都を拠点に、盆と年末、お正月に時間をつくる。産後、「下手になった」と祖母から言われてショックだったことも。

 井上流の稽古では鏡を見ない。また、祖母の四世は舞のために忍耐を重ね、唯一、踊っているときが辛抱から解放されて自由だったように見えたなど、芸の厳しさもうかがえる。 

週刊朝日  2017年6月9日号