アラビア語を学び、パレスチナに足を運び続ける写真家の、2011年から14年にかけてのヨルダン川西岸地区と東エルサレムの記録。「家族」の家や難民キャンプで暮らした日々をていねいに描く。

 イスラエル軍に対する非暴力のデモを繰り広げていたはずのビリン村には、嫉妬と裏切り、分断のはかりごとが渦巻いていた。イスラエル側が建設した分離フェンスはコンクリートの壁に変わり、デモの参加者が減り、イスラエル軍の兵士に石を投げる若者たちも現れた。「家族」の一員は、国のためとの信念から、危険な働きをした結果、自身と家族の命を脅され、秘密を抱え込んだままお調子者を演じていると吐露。犠牲にしたものの多さに皆が疲れ切っていると漏らす。

 自身のオリーブ畑を耕そうとする人々の希望を踏みにじる暴力が生々しい。

週刊朝日  2017年5月19日号