大学生の貧困問題に早くから取り組む教育社会学者が、なぜ今社会で奨学金が問題となっているのかを解説した。

 近年、大学生の間で奨学金利用者は急増している。背景には日本社会での雇用体系の揺らぎなどに伴う、親世代の収入低下がある。仮に月12万円ずつ借り入れた場合、学部卒業時の返済額は600万円近くに膨れ上がる。大学時代に借りた奨学金がネックとなり、大学院進学を断念した女性、結婚時相手方の両親に難色を示された女性──学生の姿からは、若い時期の「借金」が進路選択、結婚など、その後の人生の全局面に影響を及ぼすことが読み取れる。奨学金制度の充実は、社会に出る前の「スタートの平等」につながる、という著者の指摘に同意。金銭面に限らず“学ぶ自由”という原点にまで立ち返って考え込む。

週刊朝日  2017年5月5-12日号