古本市をはじめ福岡でブック・カルチャーを盛り上げる書店主が、本屋になるまでの経緯や、本への思いを綴った。

 30歳を前に、イタリアで人が集まるエネルギーを持つ「場」の力を実感。高校時代を過ごした福岡に戻り、アルバイト経験を経て書店をオープンさせたのは2001年、39歳の時のこと。30代後半、未経験分野、かつ出版不況の中での本屋開業──冒険心に満ち満ちたその経歴には、驚きを禁じ得ない。しかし、鬱屈とした青春期を本屋に救われたという著者は、書店とは町に不可欠の文化的インフラだときっぱり。カフェを併設して大人の場所を作り、イベントで人と人をつなげられる。不況を嘆く前に、本の魅力を伝えるメッセージ発信に「どこまで全力で取り組めるか」だと問う。「本のある暮らし」の意味を再考させられる。

週刊朝日 2017年3月24日号