りんごを毎日食べ続け、食べ比べ、旅をした著者の紀行エッセイ。青森県の地方紙「東奥日報」に2015年10月から翌年4月まで連載した原稿に加筆した。

 りんごの美味しさと、それを作った人、届けた人、背景にある物語が喜びに満ちたリズムで書かれ、全27章の大半に付けられたコラムでは、写真入りでレシピなどが紹介されている。りんご史料館、弘前市りんご公園の魅力も綴られ、青森の観光ガイドとしても実用的だ。りんごにまつわる思い出のほか、「早生種」「品種更新」「蜜と甘さは関係ない」など近年の研究成果も記されている。

 著者の好奇心と行動力、そして「りんご愛」が刻まれている。「紅の夢」「彩香」「ジョナゴールド」「恋空」。読みながら、自然にりんごの名前を覚え、りんごがますます好きになる一冊だ。

週刊朝日 2017年3月10日号