書評『その島のひとたちは、ひとの話をきかない』森川すいめい著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

《話題の新刊 (週刊朝日)》

その島のひとたちは、ひとの話をきかない 森川すいめい著

このエントリーをはてなブックマークに追加
松岡瑛理書評#話題の新刊

 一人の精神科医による類まれなフィールドワークの記録だ。診察中心の医療体制に物足りなさを感じていた著者は、全国5カ所の「自殺希少地域」を訪ね歩く旅に出る。旅の中で、医師の立場を離れて旅行者として遭遇したエピソードが紹介される。
 徳島県旧海部町を旅行中、歯痛に襲われた著者に、宿主は「82キロ先の歯医者まで送ろう」と声をかける。困ったひとがいれば、解決するまで関わろうとする──それは、地域を超えた共通点だった。「同調」とは違い、住民たちは自身の意見を明瞭に持つ。東京都神津島村のある若者はその様子を指してこういう。「この島のひとたちは、ひとの話をきかない」。自分をどう持ち、他人といかに関わるか──日々の実践がそれ自体、病の「予防」なのだ。医療への発想が転換する一冊。

週刊朝日 2016年8月5日号


トップにもどる 書評記事一覧


おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事
あわせて読みたい あわせて読みたい