書評『永田鉄山 昭和陸軍「運命の男」』早坂隆著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《文庫・新書イチオシ(週刊朝日)》

永田鉄山 昭和陸軍「運命の男」 早坂隆著

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青木るえか書評#文庫・新書イチオシ

戦争が教えてくれている

 歴史に「もし」はない、とはよく言われるし実際その通りと思うが、それでもつい考えてしまう、というのはどうしても「後悔先に立たず」だからで、大失敗してしまった後など「あの時ああなら」とつい考えるのもムリはない。
 コトが敗戦、とかだとその思いはさらに大きくなる。そしてどうしても「結果で見る拙劣な作戦」が、「あの時にアイツじゃなくてあの人が指揮を執っていれば」というような「もし話」になる。
 永田鉄山(てつざん)という人も「相沢事件で殺されていなければいずれ“陸軍最高の頭脳”といわれた彼がトップにたち日本はあのようなことにはならなかった」と、よく言われている。
 永田鉄山という人がどんな生い立ちかということを知らなかったので、この本は面白く読んだ。なるほど、頭がよくさらに勤勉で、真面目で話のわかる、部下思い家族思いの人であったようだ。
 では陸軍軍人としての永田はどういう人であったか。軍内の派閥を解消すべく動く。戦争というものはかならず「総力戦」になるとして「国家総動員体制」を確立しようとする。……むろんこれだけのことではないが、「軍隊というものを国の基本」とする考えから一歩も出ていない人のように見える。軍隊という組織の中では能吏(のうり)なのであろうが。
 永田が目指すものがその通りに実現するわけがなく、いろいろな思惑(政治や軍部の)のもとに、つぶしたりつぶされたりしている。そして恨みをかってついに陸軍省の中で斬り殺されることになる。
 永田や、山本五十六などは「あの男が生きていれば、ああはならなかった」とよく言われるけれど、もしそうならいったいどうなったのか。さして変わりはないのではなかろうか。人がひとり生きても死んでも、歴史の流れなど止められない。だからこれからのことを気をつけねばならない、ということを戦争は教えてくれているのではないだろうか。

週刊朝日 2015年7月31日号


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