少年時代

話題の新刊

2015/05/13 13:13

 安野光雅画伯の少年時代を中心とした思い出エッセイである。89歳の著者の少年時代だから、80年以上前のことも多い。それを覚えている記憶力に驚く。津和野で安野少年は3月20日の苗市の立つ日に生まれた。小学生時代、体育が苦手で運動会ではいつもビリに近かった。勉強も嫌いで好きなのは絵を描くことだった。
 仲の良かった弟に学校に行く前から勉強を教え、読み書きできるようにした。その弟に「いいか、うちには地下室がある」と一生の秘密を打ち明けた。弟が本気にすればするほど、話に熱が入った。大嘘でも弟は目をはっきり開いて聞いた。その弟を一度だけぶったことを、今は詫びたい気持ちだという。
 安野さんのエッセイはシリトリのようにテンポよく展開する。「文明の利器」の項で、ひのしという柄杓のような形をしたアイロンやだるまストーブなど昔の道具を懐かしむ。自動車、飛行機、コンピューターと文明は進展し生活は激変した。便利はいい。その半面うしなったこともたくさんあると指摘する。書き下ろした絵が20枚以上あって楽しい。

週刊朝日 2015年5月22日号

少年時代

安野光雅著

amazon
少年時代

あわせて読みたい

  • いずれの日にか国に帰らん

    いずれの日にか国に帰らん

    週刊朝日

    6/20

    安野光雅「小金井刑務所」からの年賀状で騒動に

    安野光雅「小金井刑務所」からの年賀状で騒動に

    AERA

    1/1

  • 司馬遼太郎と安野光雅はファン同士 でも「街道をゆく」は合わなかった?

    司馬遼太郎と安野光雅はファン同士 でも「街道をゆく」は合わなかった?

    週刊朝日

    2/13

    画家・安野光雅氏「女優・高峰秀子の大ファンだったから……」

    画家・安野光雅氏「女優・高峰秀子の大ファンだったから……」

    週刊朝日

    6/16

  • 追悼・安野光雅さん 皇居スケッチで美智子さまと談笑、時には電話も

    追悼・安野光雅さん 皇居スケッチで美智子さまと談笑、時には電話も

    週刊朝日

    1/20

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す