書評『マララ』マララ・ユスフザイ、パトリシア・マコーミック著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《今週の名言奇言 (週刊朝日)》

マララ マララ・ユスフザイ、パトリシア・マコーミック著

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斎藤美奈子書評#今週の名言奇言

マララ 教育のために立ち上がり、世界を変えた少女

マララ・ユスフザイ、パトリシア・マコーミック著/道傳愛子訳

978-4265860135
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でもその暴力と悲劇から、チャンスが生まれた。

 マララ・ユスフザイ著・道傳愛子訳『マララ』。「教育のために立ち上がり、世界を変えた少女」という副題がまぶしい。今年史上最年少の17歳でノーベル平和賞を受賞した、あのマララさんの自伝である。
〈覆いをかぶって生きるのは、あまりに不公平だし、きゅうくつそうな気がした。小さいころから、わたしは両親に宣言していた。ほかの女の子たちがどうしようと、わたしはぜったいあんなふうに顔をかくさないからね、と〉
 マララはパキスタン北部のスワート県に住むパシュトゥン人。自ら学校を経営する父は、女の子だからとマララを差別しなかった。〈おまえの自由は父さんが守るよ。夢にむかって進みなさい〉と父はいった。
 しかし、2005年、パキスタンを襲った大地震に政府は適切な対応をせず、この隙に乗じて勢力を伸ばしたタリバンが07年に実権を握ると、指導者のファズルッラーは学校を次々に爆破した。父には脅迫状が届き、イスラムの教えに反するとして多くの人が殺された。学校で平和に関する発表をしたのを機に、マララはBBCの求めに応じ、タリバンに支配された町のようすを匿名のブログの形で公開。11歳にして世界の注目を浴びる少女になってしまった。
 こうして11年、マララはパキスタン国民平和賞を受賞するが、翌12年、タリバンはマララに対する殺害予告を出す。そして同年10月、タリバンはスクールバスを襲撃、マララは左目近くに銃弾を受けた。イギリスの病院に移送されたマララは奇跡的に一命をとりとめるが……。
 この経験を憎みながらも〈でもその暴力と悲劇から、チャンスが生まれた。そのことを、忘れないようにしたい〉と書くマララ。政府への強い不信の念を抱き、早くから政治家を志した少女は、すでにして筋金入りの政治家だ。立派すぎてため息が出ちゃうけど、日本の子どもたちが世界で起きていることを知るには好適な本。小学校高学年から読める児童書として出版されています。

週刊朝日 2014年12月5日号


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