マララ

今週の名言奇言

2014/11/26 15:51

 マララ・ユスフザイ著・道傳愛子訳『マララ』。「教育のために立ち上がり、世界を変えた少女」という副題がまぶしい。今年史上最年少の17歳でノーベル平和賞を受賞した、あのマララさんの自伝である。
〈覆いをかぶって生きるのは、あまりに不公平だし、きゅうくつそうな気がした。小さいころから、わたしは両親に宣言していた。ほかの女の子たちがどうしようと、わたしはぜったいあんなふうに顔をかくさないからね、と〉
 マララはパキスタン北部のスワート県に住むパシュトゥン人。自ら学校を経営する父は、女の子だからとマララを差別しなかった。〈おまえの自由は父さんが守るよ。夢にむかって進みなさい〉と父はいった。
 しかし、2005年、パキスタンを襲った大地震に政府は適切な対応をせず、この隙に乗じて勢力を伸ばしたタリバンが07年に実権を握ると、指導者のファズルッラーは学校を次々に爆破した。父には脅迫状が届き、イスラムの教えに反するとして多くの人が殺された。学校で平和に関する発表をしたのを機に、マララはBBCの求めに応じ、タリバンに支配された町のようすを匿名のブログの形で公開。11歳にして世界の注目を浴びる少女になってしまった。
 こうして11年、マララはパキスタン国民平和賞を受賞するが、翌12年、タリバンはマララに対する殺害予告を出す。そして同年10月、タリバンはスクールバスを襲撃、マララは左目近くに銃弾を受けた。イギリスの病院に移送されたマララは奇跡的に一命をとりとめるが……。
 この経験を憎みながらも〈でもその暴力と悲劇から、チャンスが生まれた。そのことを、忘れないようにしたい〉と書くマララ。政府への強い不信の念を抱き、早くから政治家を志した少女は、すでにして筋金入りの政治家だ。立派すぎてため息が出ちゃうけど、日本の子どもたちが世界で起きていることを知るには好適な本。小学校高学年から読める児童書として出版されています。

週刊朝日 2014年12月5日号

マララ 教育のために立ち上がり、世界を変えた少女

マララ・ユスフザイ、パトリシア・マコーミック著/道傳愛子訳

amazon
マララ 教育のために立ち上がり、世界を変えた少女

あわせて読みたい

  • 「世界を変えるのは一冊の本と一本のペン」 タリバンに立ち向かう16歳の少女マララ

    「世界を変えるのは一冊の本と一本のペン」 タリバンに立ち向かう16歳の少女マララ

    BOOKSTAND

    12/12

    マララさんが明かす教育の現実「ゲーム機よりたった1本の鉛筆を欲しがる」子どもたち

    マララさんが明かす教育の現実「ゲーム機よりたった1本の鉛筆を欲しがる」子どもたち

    AERA

    12/13

  • 室井佑月「首相に誰かレクチャーしておくれ」
    筆者の顔写真

    室井佑月

    室井佑月「首相に誰かレクチャーしておくれ」

    週刊朝日

    10/15

    「マララも本当に普通の女の子」ドキュメンタリーの監督が語る素顔

    「マララも本当に普通の女の子」ドキュメンタリーの監督が語る素顔

    AERA

    12/13

  • 異色の女性監督が描く母娘の命懸けの逃避行 映画「娘よ」の壮絶な美

    異色の女性監督が描く母娘の命懸けの逃避行 映画「娘よ」の壮絶な美

    AERA

    3/25

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す