金沢を歩く

新書の小径

2014/10/01 12:31

 書名通り「金沢を歩」いた本だ。それは、町を歩いて風物を紹介もしているし、町の成り立ちから歴史を歩んで紹介する、という意味もある。
 古都・金沢であるので、まずは文化的なものから紹介される。兼六園や尾山神社といった古くて有名なものはもちろん、金沢市民芸術村、鈴木大拙館、金沢21世紀美術館といった新しい文化施設。「文化的、芸術的価値の高い施設が、町の中心部に、先鋭的なデザインの建築としてたくさんある。さすがに金沢!」と思わせる。
 とくに、金沢21世紀美術館は、現代美術の有名作家による作品が入っていて、おまけに建物はSANAA(有名建築ユニット)の設計で、「芸術新潮」とかで大々的に取り上げられてた記憶がある。市民がするすると入ってきて、現代美術を楽しみながらくつろげてしまうのだ。年間の入館者は約150万人。こういうものが自分の住んでる町の真ん中に出来て、それが市民に受け入れられるようなところに住んでみたいものよ……と思わされる。
 しかしこれだって「古都に現代美術館はそぐわない」というような反対があったそうで、しかしこの美術館建築を進めたのが「当時、市長だった私」。つまり著者。この本、金沢市の元市長によって書かれた本なのである。
 旅行者でなく、住民でなく、為政者が書いた「町の本」。前田家からの歴史が積み上げられてきた古都。ただ古いだけではなく、そこに新しい文化も育てて定着させて、さらに魅力的な“生きている古都・金沢”を、自分が先頭に立ってつくった、という自負がある人による「金沢本」なのだ。
 控えめな筆致ながら、金沢の素晴らしさが語られまくる。読めば読むほどいい町なんですねと思う。ただ、これはイチャモンに近いけれど、あまりに公明正大な感じの文章で、なんだか市役所のパンフレットにある「市長の序文」がえんえん続いて一冊になったような気にもさせられるんですよね。

週刊朝日 2014年10月10日号

金沢を歩く

山出保著

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金沢を歩く

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