書評『ダブリンで日本美術のお世話を』潮田淑子著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

ダブリンで日本美術のお世話を 潮田淑子著

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村井重俊書評#話題の新刊

 潮田淑子さんはアイルランドに1960年から住み始めて54年。元ダブリン大教授の夫、哲さんとともに「草分け」的な存在だ。司馬遼太郎さんも『愛蘭土紀行』の取材で、夫妻から貴重なアドバイスをもらっている。
 その潮田さんは70年からダブリンのチェスター・ビーティー・ライブラリー(以下CBL)に関わってきた。「日本の中世の絵本や絵巻物を研究したいなら、ダブリンの小さな図書館を訪ねてみたらいい」といわれるCBLで、専門知識のない潮田さんが膨大な日本関係の収蔵品の“山々”に分け入っていく。浮世絵版画や摺物、絵巻物のカタログ作りから始まり、やがて絵入りの写本「奈良絵本」の世界へ。『武蔵坊絵縁起』『源氏物語』などの奈良絵本については、ダブリンや東京、京都で国際会議が開かれるほど貴重なものだった。潮田さんは世界的な研究者に鍛えられ、最初はボランティアとして、のちには学芸員となっていく。CBLの話もおもしろいが、アイルランドでギネスの飲めない日があるなど、至る所にちりばめられたアイルランド事情も本書のスパイスとなっている。

週刊朝日 2014年10月10日号


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