書評『ぼくと数字のふしぎな世界』ダニエル・タメット著/古屋美登里訳 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

ぼくと数字のふしぎな世界 ダニエル・タメット著/古屋美登里訳

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谷本束書評#話題の新刊

ぼくと数字のふしぎな世界

ダニエル・タメット著/古屋美登里訳

978-4062181686
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 作家、言語学者として活躍する著者は高機能自閉症でサヴァン症候群、数字について類まれな能力を持っている。無限に続く分数やアイスランドの「4」の数え方、数の概念をもたない南米の先住民など、人生の中で出会うさまざまな数学について語るエッセー。
 9人きょうだいに生まれた著者は、いつも生活に数がついて回り、家族を観察することは数学を学ぶことでもあった。ケンカをすれば部分集合に分かれ、家に誰も居ないときは空集合を作る。
 会計士になりたいという主婦に数学を教えたときの話が印象的。負の数をわかってもらえず困っていると、彼女はふと「抵当みたいなものかしら?」と言った。自分よりはるかに深く本質を理解し、つらい経験に裏打ちされたその言葉に著者は深く感動する。
 トルストイは微分積分法で歴史をとらえよと主張し、俳句が鮮やかな映像を呼び起こすのは五七五という素数のもつ簡潔さのゆえだという。数学を通して著者が眺める世界は、私たちが見たことのない、わくわくするような秘密の姿を見せる。混沌ではなく、すべてが美しい秩序に満ちている。

週刊朝日 2014年8月29日号


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