《新書の小径 (週刊朝日)》

名画で読み解くロマノフ家12の物語

青木るえか書評#新書の小径
「名画で読み解く」シリーズの第三弾。ハプスブルク家、ブルボン家ときて、ネタは尽きたかと思ったらロシアのロマノフ家を出してきた。この王家はこんなに波瀾万丈なんですよ、ということを名画から教えてくれるのだが、これもたいへん面白い。
 西欧やロシアの王家なんて近世に戦いによって樹立されたものだから盤石なようで盤石でない。だから絵画で正統性や高貴さを演出してるわけだ。つまり神話を創り出そうとしたのである。今となってはその王朝もなくなり、神話ではなくなり、「歴史」によっていいこと悪いことが白日のもとにさらされてしまった。そんな今だから、見ていて楽しくてしょうがない、王家がらみの名画なのだ。
 オーストリアやフランスとくらべてロシアとくると何かあか抜けず、田舎の金持ち、みたいなイメージがある。さすがに王家となるとそんなことはない……こともなくて、イワン雷帝が息子とケンカしたあげく息子を殺しちゃったところの絵など、なんともいえない無教養な雰囲気が漂っていて救いがない。これがハプスブルク家とかだと、周囲の文化だけはちゃんと感じさせたものだが。
 ピョートル大帝の姉、「皇女ソフィア」の絵もすごい。男勝りで頭もよく、弟ピョートルを始末しようとしてた姉ソフィアの、風貌がすごい。抗争に敗れて修道院に押し込められている。窓の外には弟が見せしめに処刑した、反乱首謀者の首吊り死体がぶら下がっている。ソフィアの表情はマツコ・デラックスがさらに仮装して凄んでるみたいだ! 激しくロシアっぽいよ、ソフィアさん!
 ロシアにおける王家の絵画は女の肖像画が見モノである。有名なエカテリーナ二世をはじめ、よく知らない王妃とかでもやけに生々しい。エカテリーナ一世なんて近所のおばちゃんと見紛う庶民的風貌。でも金はある。憎めないが尊敬できないという、ロシアのある種のイメージをきっちり絵画によって見せてくれる。

週刊朝日 2014年8月22日号
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