有次と庖丁

話題の新刊

2014/06/19 15:30

 京都の台所、錦市場の庖丁屋、「有次」。450年余りの歴史をもちつつも革新的な老舗の矜持を編集者が追った。禁裏御用の小刀屋だったルーツから、名人・沖芝昂による鍛冶仕事、庖丁を愛用するプロの証言、新製品のオーダーに応える現場まで網羅する。
 左利き用に始まり、柳刃刺身庖丁、鰻専用の江戸サキや京サキ、ハモの骨切庖丁にフグ引庖丁など、「有次」は400種類以上の庖丁を揃える。そして京料理の厨房をまわって御用聞きをするのだ。たとえば高級鮮魚店の「まる伊」は、大晦日を含めた2日間で、1日1000匹ずつフグを捌く。使った30本の庖丁を「有次」は引き取り、一晩で研いで届ける。研ぎを重ねて短くなった柳刃刺身庖丁は成形してペティナイフとしてよみがえらせる。ある料理人は薄給の修業時代、あるとき払いの催促なしで憧れの有次を手に入れたと話す。若い料理人を育てようとする店の心意気だ。
 最近の作品に、生ハム切り庖丁や葉巻切り庖丁がある。「うちでできないことはない」という職人気質は、やったことがないことを理由に断らない。信頼の所以だ。

週刊朝日 2014年6月27日号

有次と庖丁

江弘毅著

amazon
有次と庖丁

あわせて読みたい

  • 1本の包丁から宇宙を見出す? 荘子が説く養生の道
    筆者の顔写真

    帯津良一

    1本の包丁から宇宙を見出す? 荘子が説く養生の道

    週刊朝日

    7/3

    伊藤まさこさんのトークイベント開催! 明かされた連載裏話とは

    伊藤まさこさんのトークイベント開催! 明かされた連載裏話とは

    7/8

  • 京都がパン消費量日本一になった理由とは? 京都人の極上パン生活を紹介
    筆者の顔写真

    ナカムラユキ

    京都がパン消費量日本一になった理由とは? 京都人の極上パン生活を紹介

    dot.

    9/18

    フグを温泉で育てると毒がなくなる!? 「フグ肝」食べられる日はすぐそこ
    筆者の顔写真

    岡本浩之

    フグを温泉で育てると毒がなくなる!? 「フグ肝」食べられる日はすぐそこ

    AERA

    2/12

  • 毒を秘めた禁断の美食!? ちょっとツウなフグのお話

    毒を秘めた禁断の美食!? ちょっとツウなフグのお話

    tenki.jp

    1/18

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す