書評『介護はつらいよ』大島一洋著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《今週の名言奇言 (週刊朝日)》

介護はつらいよ 大島一洋著

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斎藤美奈子書評#今週の名言奇言

介護はつらいよ

大島一洋著

978-4093883634
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その前に生きてるかどうかという問題や

 介護体験記が流行だけど、ここまで「本格派」の自宅介護を体験した人の手記は少ないと思うな。
『介護はつらいよ』の著者・大島一洋は「平凡パンチ」を経て「ダカーポ」「鳩よ!」の編集長を務めた名うての編集者。私もかつて大変お世話になった。その大島さんが2004年にマガジンハウスを定年退職。介護のために帰郷されたところまでは知っていたつもりだったが……。
 父93歳、母88歳、息子の一洋は63歳。東京の自宅で父のSOSの電話を受け、ついに来たなと覚悟を決め岐阜県中津川市の実家に戻ったのが06年。妻は東京で同居する92歳の母の介護があり、弟も故郷には戻れず、中津川には親戚もいない。
<頑固な父と、私のこともわからない認知症の母の世話をするのは、息子の私一人では無理だと思えました。それでも、やらなくてはならない。無理だなどと引いている暇はなかったのです>。ということではじまった男ひとりの介護生活。
 父を入院させた病院で<この歳で介護保険に入っていないとはどういうことですか>と看護師さんに叱られて、ようやく申請の手続きをする。父は要介護3、母要介護2。
 父の不在に気づいた認知症の母がいった。「父ちゃんはどこ行ったの?」「病院」「どこの?」「市民病院」「そうかね、父ちゃんもボケてきたからね」。お母さん、すてき!
 父母が交互に倒れるわ、トイレ問題は襲いかかるわ、老人介護施設でトラブるわ、本人も交通事故や白内障で入院するわ。それでも夜は酒場でストレスを発散し、かつての同級生たちに助けられ、母を看取って、父が100歳を迎えるまでの7年半。「気分が悪いの?」と聞く息子に98歳の父は答えた。「気分がどうのこうのというより、その前に生きてるかどうかという問題や」。お父さん、すばらしい!
 淡々と書かれた介護日記にはお金の出入りなども細かく記され、参考になるところ大。エッセイとしても実用性の点からもオススメ!

週刊朝日 2014年5月30日号


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