書評『人に強くなる極意』佐藤優著 |AERA dot. (アエラドット)

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《ベストセラー解読 (週刊朝日)》

人に強くなる極意 佐藤優著

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長薗安浩#ベストセラー解読

人に強くなる極意

佐藤優著

978-4413044097
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国家に対しては大いに“びびる”べき

 新聞を開くと、年に何度も佐藤優の新刊広告を目にする。私が定期購読している多くの雑誌でも佐藤は連載していて、同じ1960年生まれとしては、その尋常ならざる仕事量に畏怖の念すら抱いている。
 そんな人気作家の佐藤が、青春出版社から『人に強くなる極意』を出した。タイトルと出版社名を見たとき、私はすぐに対人関係に悩む若者向けのハウツー本だと思った。そう思って巻頭を読むと、<本書には、近未来、日本が大きな変化に巻き込まれることを想定したうえで、われわれ一人ひとりが生き残るにはどうすればよいかというノウハウを記している>とあった。青春新書の一冊とあって早合点してしまったが、佐藤は、「グローバリゼーションの本格化」と「国家機能の強化」という大きな時代状況に対応せざるを得ない日本人の人間力向上を願い、いつもよりわかりやすくこの本を書いた。
 内容は、「怒らない」「びびらない」「飾らない」「侮らない」「断らない」「お金に振り回されない」「あきらめない」「先送りしない」という八つのテーマ順に構成されている。その上で<真理は具体的であると考える>佐藤らしく、自身の体験を中心に「極意」を紹介。面白いのはテーマに反する必要性についてもそれぞれ言及している点で、「びびらない」では、自分の力よりも圧倒的に大きな、たとえば国家に対してはびびるべきだと説く。外務省の主任分析官として対ロシア外交で活躍し、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕されてからは国策捜査に異を唱えて512日間も拘置所生活を送った佐藤。国家権力の怖さを熟知しているだけに大いにびびり、つけこまれないよう領収書の管理や交通規則の遵守などは徹底しているらしい。
 このように自身の日常までも披瀝した内容について、<標準的な努力ができる人なら確実に実行できる>と佐藤は断言している。標準的な努力……真理の活用はやはり読者次第だ。

週刊朝日 2014年3月14日号


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