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父 吉田健一
話題の新刊
2014/02/26 17:13
本書は、著者の吉田暁子が父吉田健一をめぐって書き綴ったエッセイ集だ。大の酒好きとして有名であり、酒に関するエッセイも数々残した文筆家吉田健一。「この本が、父のため、父の作品のため」になれば、と書く著者は、時には家での思い出を語り、時には残された作品について語りながら、新しい吉田健一像を描き上げている。
著者は、父の一生は厳しく自分を律し、決まったことを日々繰り返す「正確無比」なものだったと言い切る。酒飲みであっても、大好きな酒で羽目を外す「その日、その時期」さえ決めていた。子供に対して口を利くことはめったになかったが、「冷たい」父親とも思わず、むしろ家族のために節制する誠実な人柄を著者は「大変好き」だと言う。
自分の著作を署名入りで献呈してくれた時に、「お暁」ではなく「暁子様」と書いてくれたことを見て、やっと一人前と認められたと語る著者の語り口からは、父をこよなく愛する娘の嬉しそうな顔が浮かび上がる。飾らない言葉で書かれた著者のまっすぐな気持ちに心を惹かれる一冊だ。
※週刊朝日 2014年3月7日号
父 吉田健一
吉田暁子著


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