自分では気づかない、ココロの盲点

ベストセラー解読

2014/01/23 14:43

 街で道に迷ったとき、近くに2人の男がいたとする。1人は、さわやかな顔立ちの男。もう1人は、ボサボサ髪で無精ヒゲの男。さて、どちらに道を訊く人が多いだろうか?
 本誌の連載でもおなじみの脳研究者、池谷裕二の『自分では気づかない、ココロの盲点』にはこのような問題が30個、用意されている。タイトルにある「ココロの盲点」とは認知バイアスのことで、池谷によれば、それは「脳のクセ」のようなものらしい。
 たとえば冒頭の問いの場合、さわやかな顔立ちの男に訊く方が多くなるのだが、その原因は認知バイアスの1つとされるハロー効果にある。対象の目立つ特徴に着目して全体を判断してしまうハロー効果。人は見かけではないと言いつつも、いざ道を訊ねるとなれば、強面の人よりも柔和そうな人を選んでしまう「脳のクセ」を私たちはもっているのだ。
 他人に囲まれて生きていく以上、できるだけ冷静に、理屈が通った判断を心がけたいと多くの人は思う。私もそうありたいと願っている。しかし、実際はどうだろう。直感や先入観によって論理的な思考はすぐに歪み、後から思えば悔やむしかない判断をくり返してはいないだろうか……すべては自分の不甲斐なさのせいだと思ってきたが、そうなる原因は、どうも認知バイアスにあるようだ。
 池谷はたくさんある認知バイアスの中から30個を厳選して問題を作り、取りあげられなかったものについても、代表的な183個を巻末で紹介している。これらをすべて読むと、思いあたる項目の多さに驚く。記憶錯誤、自制バイアス、選択盲、対比効果、情報源の混乱……何となく気づいていたものも散見されるが、人それぞれの個性は、どの認知バイアスに影響を受けやすいかによって決まってくるのではとさえ思う。
 私を私らしくしている私の「脳のクセ」。それらは多かれ少なかれ誰にもあるものだと知れば、もう少し他人に優しくなれそうだ。

週刊朝日 2014年1月31日号

自分では気づかない、ココロの盲点

池谷裕二

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自分では気づかない、ココロの盲点

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