誕生日を知らない女の子

話題の新刊

2013/12/19 15:16

 後を絶たない児童虐待。私たちは、幼い命が失われたと聞けば憤り、寸前で救い出されれば胸をなでおろす。だが、命をつないだ子のその後に思いを巡らせることはまずない。虐待の現場から救い出された子は、どのような人生を送っているのか。5人の「その後」を丹念に追ったのが本書だ。
 5歳でファミリーホームにやって来た雅人くんは無表情。一言もしゃべらず、束ねたカーテンに隠れてしまう。小学6年生の明日香ちゃんは自分を虐待した母の元に戻ることを希(こいねが)い、「奴隷でもいいから、帰りたい」と訴える。それぞれに壮絶な人生だが、目を背けず読み進められるのは、虐待された子を引き取った大人たちの献身的なまでの朗らかさと、著者の淡々とした筆致の故か。
 本書は週刊朝日での計8回の連載がもとになっている。全面的に再取材した作品は今年度の開高健ノンフィクション賞を受賞した。
 虐待がいかに深く、長く、子どもの心に傷を残すのか。そして、再生にはどれほどのエネルギーが必要になるのか。そのことを痛感させられる1冊だ。

週刊朝日 2013年12月27日号

誕生日を知らない女の子

黒川祥子著

amazon
誕生日を知らない女の子

あわせて読みたい

  • 大阪2児餓死事件の担当職員らが語る「児童相談所の現実」

    大阪2児餓死事件の担当職員らが語る「児童相談所の現実」

    AERA

    12/3

    児童虐待から考える

    児童虐待から考える

    週刊朝日

    9/20

  • なぜ受賞作をネットに全文無料公開? 作家・川内有緒の決断の舞台裏

    なぜ受賞作をネットに全文無料公開? 作家・川内有緒の決断の舞台裏

    AERA

    12/22

    開高健 ──生きた、書いた、ぶつかった!

    開高健 ──生きた、書いた、ぶつかった!

    週刊朝日

    6/28

  • 救急車に「虐待の早期発見チェックシート」を配備 医師とは違う視点で得た情報を共有

    救急車に「虐待の早期発見チェックシート」を配備 医師とは違う視点で得た情報を共有

    AERA

    12/12

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す