老人漂流社会

ベストセラー解読

2013/12/19 15:02

 長寿を喜べない世の中になってきたとは感じていたけれども、ここまでひどいとは……。
『老人漂流社会』は2013年1月に放送された同名のNHKスペシャルを基にした本である。高齢になった末に行き場を失った老人たちのドキュメントだ。
“漂流”のしかたはさまざま。病院や施設をたらい回しにされる人、三畳一間の無料低額宿泊所(無低)に入る人、ホームレスになる人。“漂流”にいたる事情もさまざまだが、最大の原因は貧困である。
 日本の老人はお金持ちで優雅な日々を楽しんでいる、なんて思ったら大間違い。有料老人ホームを終の住処にできるのはごく一握りの恵まれた人だけの話である。
 年金があるじゃないか、と思ったら、これが頼りにならない。国民年金と厚生年金合わせて1カ月6万5千円というひとり暮らしの老人が登場する。家賃と公共料金を払うことすら難しい。いまの年金制度は、持ち家で家族と暮らすことを前提としているのだ。65歳以上の高齢者の貧困率が22パーセントというショッキングな数字が出てくる。高齢女性は24.8パーセント。4人に1人が貧困状態だ。
 年金で足りない分を生活保護でなんとかするとしても、病気やケガでひとり暮らしが難しくなると困る。特別養護老人ホームは圧倒的に足りなくて数年待ち。サービス付き高齢者向け住宅に入れればラッキーで、簡易宿泊所(通称ドヤ)に入る人もいる。
“漂流”は備えのなかった人、家族に恵まれなかった人が陥る特殊な事態とは限らない。一戸建ての自宅に家族と住んでいた元水道工が登場する。平穏な日々が突如として崩壊する。妻に先立たれ、息子は脳梗塞で倒れる。娘も嫁ぎ先で義理の両親の介護をしつつ、自分自身ががんを患ってしまう。元水道工の老人は、もう誰にも頼れず、行くところもない。「普通に生きてきて、最後、何でこんな人生になったんだろうね……」という老人の呟きが重い。

週刊朝日 2013年12月27日号

老人漂流社会

NHKスペシャル取材班著

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老人漂流社会

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