日米衝突の萌芽

話題の新刊

2013/12/12 16:39

 このたび山本七平賞奨励賞を受賞した。著者は開国の地、静岡・下田市出身。カナダ・バンクーバーにも居を構え、太平洋の東西から日米関係を捉える。2年前に出版した『日米衝突の根源 1858-1908』の続編。
 米によるフィリピン植民地化から、第一次世界大戦終結までを扱っている。フィリピン領有で地政学的に一気に近くなった日本の脅威論、カリフォルニアでの排日運動、それを利用した独の日米離間策に、米は日本を仮想敵国としていく。米の協力で日露戦争に勝利し、列強に肩を並べた思いでいた日本にとって、米の急激な変化は戸惑いとともに反発を内包していくことになる。
 この時期の両国の為政者と国民の感情のもつれが、開戦を引き起こす「萌芽」となったと指摘する。564ページの大著だ。
 名作『昭和二十年』の著者で、歴史家の故鳥居民氏から「君ならできる」と激励を受け、開国から開戦に至る日米関係をライフワークとしている。膨大な米側の論文や資料を読み込み、鋭い推理をもって時代を解き明かしていくのが著者のスタイルだ。

週刊朝日 2013年12月20日号

日米衝突の萌芽

渡辺惣樹著

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日米衝突の萌芽

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