《新書の小径 (週刊朝日)》

落語家の通信簿

青木るえか#新書の小径
落語家の通信簿

三遊亭円丈著

978-4396113377
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 落語協会分裂騒動を書いた三遊亭円丈『御乱心』は、私の選ぶ「二十世紀名著三選」に入る。内容が偏っているという人もいるが、面白いんだからしょうがない。立川談志の人物批評なんか胸がすきましたね。さらに文章のスピードが気持ちいい。一般道を、うまく信号にひっかからず50キロぐらい出して走り続けるような気持ちよさ。「円丈はすごい文章家だ」と、その後の著書にも激しく注目していたのだが、どうも『御乱心』に匹敵するものがない気がしていたのだ。
 だがついに出た! 現役落語家が現役落語家を批評する! 藤田伸二の『騎手の一分』が「現役のジョッキーが同僚批判!」とさんざんもて囃されてるんだから、こっちだって持ち上げるぞ。
 これは面白いです。まったく落語を聴かない自分が読んで面白いんですから。最初は「落語の聴きかた」なんていう入門的なことが書いてあるが、すぐに各落語家への論評になり、超有名落語家から、聞いたことない落語家まで並べて料理される。落語家は他の落語家の噺をあんまり聴く機会がないらしい。それで、円丈はDVDやYouTubeで改めて見直した。そういう世界なのか。で、その「改めて見てみた感想」が新鮮でいい。センスが信頼できるのでこちらの気持ちにぴたっとはまってくる。ただ、これ読んで「この人の高座を聴きにいってみよう」とは思わないんだな。「もうこれでわかった」と思っちゃうから。
 円丈の、落語家に対する好き嫌いがチラチラと見えるのもたいへん良い。そうか立川志らくのことは認めてないんだな。それよりも小朝に対する「好きじゃない」感が絶妙である。つられてキライになれる。私がいちばんウケたのは、立川談春を激ホメしてる福田和也を揶揄してるところ。「誰かを好きになるたびに、『彼一人いれば、全員死んでも、何の痛痒もない……』って言ってない? 惚れっぽくて、忘れやすいんじゃないですか?」だって。まったくだ。

週刊朝日 2013年11月15日号
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