書評『思考力』外山滋比古著 |AERA dot. (アエラドット)

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《ベストセラー解読 (週刊朝日)》

思考力 外山滋比古著

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永江朗#ベストセラー解読

思考力

外山滋比古著

978-4906732371
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考えることは難しい

 勉強ばかりしているとアホになるぞ! 外山滋比古のエッセイ『思考力』を一口にまとめるとこう。知識ばかり蓄えても、考える力は身につかない。知識なんか捨てて、自分の頭で考えよう、というわけだ。
 目新しい意見ではない。ぼくも中学生のころ、担任の教師から同じことを言われた。「物知りになっても意味がないぞ。大事なのは考える力だ」と言われた。ぼくは百科事典を読むのが好きで、ときどき先生の知らないことを話して得意になっていたのである。
 外山滋比古は6年前、『思考の整理学』(ちくま文庫)がヒットして話題になった。それも、本が出てから20年以上も経ってのミリオンセラーである。盛岡の書店でつけられた「もっと若い時に読んでいれば…」というPOPがきっかけとなり、次いで、東大や京大の生協で売れているというので売れ行きに拍車がかかった。
『思考力』も『思考の整理学』と重なるところがあるが、おもしろいのは第4章の自伝的部分だ。株式投資を始めた話だとか、東京教育大を辞めてお茶の水女子大に移った経緯だとか。けっこうお金について心配する人のようで、思考力より経済力か、とぼくは思った。
 この本は、著者の意図とは別に、自分で考えることの難しさを示している。たとえば20世紀初頭、アメリカの家庭で石鹸が普及してポリオが流行したという話が出てくる。清潔になり抵抗力が落ちたからだというのだ。ネタとしてはおもしろいが、石鹸の普及による感染症の減少と、抵抗力の低下による感染症の増加を、ポリオだけでなく全体で見なければ清潔志向の善し悪しは判断できない。
 小学校教員の女性比率が高くなったので日本の科学技術が遅れるようになった(女性は理科が嫌いなので熱心に教えない)なんていう話もどうか。OECDの報告書を見ると、日本の女性教員比率は世界的に見るとかなり低い。知識なしに思考すると間違った思い込みに陥りやすい。

週刊朝日 2013年10月4日号


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