美容整形と〈普通のわたし〉

話題の新刊

2013/08/01 14:43

 身体の気に入らない部分を望み通りに変えたい。でも、劇的に美しくなりたいわけではない。そんな複雑な思いが交錯する美容整形の意味を、聞き取り調査をもとに解き明かす。
 日本で整形に踏み切る者が求めるのは、理想の「美」ではなく「普通」だ。患者たちは「普通」と異なる鼻や目、乳房を直したいと語る。これは「自然の身体」を傷つける整形をタブー視する日本ならではの特徴だという。患者の多くが微調整を望んでリピーターとなるのは「自分の身体は精神の所有物」とみる近代的な身体観が根底にあると分析する。
 同時に、患者たちは整形を機に「生まれ変わった」と証言する。劣等感から解放され、新たな人間関係や仕事を獲得し、自分を構築し直す。ここにアフリカの、身体に傷をつける通過儀礼との類似性を見る。伝統的な身体観と近代的なそれとの間で、整形は揺れているとの考察も鋭い。「人間は身体を加工する動物」という著者は、自己否定感を持つ人には整形も「ありかも」と書く。興味本位でなく、真摯に整形と向き合いたい人には「救い」となる言葉だ。

週刊朝日 2013年8月9日号

美容整形と〈普通のわたし〉

川添裕子著

amazon
美容整形と〈普通のわたし〉

あわせて読みたい

  • 「夏休みに二重にしたい」と娘から告げられた 美容整形を止めるのは親のエゴか?

    「夏休みに二重にしたい」と娘から告げられた 美容整形を止めるのは親のエゴか?

    dot.

    8/23

    「整形は努力」20回総額約1千万円、過程も公開…20代女性の胸の内

    「整形は努力」20回総額約1千万円、過程も公開…20代女性の胸の内

    AERA

    8/29

  • 鈴木おさむ「ある女性タレントの顔が…」整形手術が“麻痺”する感覚
    筆者の顔写真

    鈴木おさむ

    鈴木おさむ「ある女性タレントの顔が…」整形手術が“麻痺”する感覚

    週刊朝日

    11/21

    大学入学前に美容整形したいと切望する18歳高校生に鴻上尚史がまず分析した「日本のルッキズムの現実」とは?
    筆者の顔写真

    鴻上尚史

    大学入学前に美容整形したいと切望する18歳高校生に鴻上尚史がまず分析した「日本のルッキズムの現実」とは?

    dot.

    11/8

  • 紫外線が気になる季節。ハリウッドではアンチエイジングも自由自在⁉︎

    紫外線が気になる季節。ハリウッドではアンチエイジングも自由自在⁉︎

    tenki.jp

    5/16

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す