書評『秀吉の出自と出世伝説』渡邊大門著 |AERA dot. (アエラドット)

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《新書の小径 (週刊朝日)》

秀吉の出自と出世伝説 渡邊大門著

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青木るえか#新書の小径

秀吉の出自と出世伝説

渡邊大門著

978-4800301178
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秀吉の残虐さはエロい

 豊臣秀吉は家康なんかに比べて人気があるらしいのだ。確かに「今太閤」なんて言葉もあるが、今太閤って決していい意味じゃないよな。育ちは悪いが頭のいい男がずる賢く立ち回って大金を儲けて酒池肉林、最後には没落する、というような。それでも「愛嬌があって」「能力と気働きがあって」「こんな部下がいたら最高」というイメージが秀吉にはある。信長の草履をあっためたことから始めたとかいう太閤伝説もある。
 しかし一方で朝鮮出兵だの豊臣秀次一家皆殺しとか、シャレにならない残虐な面がある。秀吉の実際はどうだったのか、なんでそういうことになったのかを論じたのが本書です。秀吉については伝説がいっぱいある。それを冷静に詳しく見ていくと……。
 「コジキと見紛う貧乏から、図抜けた才覚でどんどん出世。機を見るに敏」なのは確かである。そして愛憎が深い。自分の(狭い範囲の)係累しか愛さない。自分の母親が産んだ、父親違いの弟が登場した時など、ただちに母親に確認する。母親はブルブルと首をふって「違う」と言い、言った瞬間にその「弟」を捕らえて目の前で首を斬る。私はどっちかというと秀吉のお母さんのほうがコワイと思ってしまうが、息子もじゅうぶんコワイ。
 城を落とすと、男は首をはね、女は磔(はりつけ)、子供は串刺しにして国境に並べる。戦国時代とはいえ、当時の記録でも「こりゃひどい」ってことになってるようなので、相当なもののようだ。残虐といえば織田信長も名が高いが、どうも信長と秀吉の残虐さには違いがあるような気がする。秀吉の残虐さのほうがエロい。ぐへへへ……とヨダレ垂らしながら虐殺するイメージがある。というのも、私の頭の中には淀殿をはじめとして大量の女をはべらせたことがあるからだ。
 上に行きたい人は多くても、自力でそれをハデに成し遂げた、っていうのは秀吉ぐらい。それをやれた秀吉は、運もあったが能力もすごくあった。そのこともこの本を読むとよくわかります。

週刊朝日 2013年6月14日号


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