《新書の小径 (週刊朝日)》

歴史の愉しみ方 忍者・合戦・幕末史に学ぶ

青木るえか#新書の小径
 これを読んでいると「うわ、歴史ってこういうコマコマした部分にぐっと近づいてみると、すんごい面白いな!」と思う。それだけじゃない。「この人の文章はなんだかやたらと面白いな!」と思う。面白いのが2倍というか2乗というか。
 歴史エッセイ集です。第1章が「忍者の実像を探る」で、多くの類似本をつかまされてきた者として言わせてもらうと、こういうタイトルで面白かったためしナシ!ただのつまらん資料の羅列だったり、つまらん想像の羅列だったり。しかしこれは違った。忍者に関する資料の開陳があり、古文書を探す自分についての記述もあり、その配分というか混ざりぐあいが絶妙。取り上げる歴史の話に加え、その話にたどりつくまでの苦労や偶然や僥倖の話がまたいい。
 江戸時代になると、忍者の名前が「侍帳(さむらいちょう)」に載るようになり、「これでは誰が忍者かわかってしまう」と書く。この微妙な可笑しさ。狙って書いているにちがいないが、「“狙ってる”ヤツ嫌い」な私でも、この塩梅ならまあ許す(一体私は何様なのか)。
 忍者というのは、シロート向け歴史本の中ではメジャーな、しかし案外面白くないアイテム。それを第1章に持ってくるのも相当な自信で、これがつまんなきゃ激怒モノだし、まあまあ程度なら失笑モノというハードルを鮮やかに飛び越えている。その後に出てくるネタも、「江戸の狆(ちん)飼育」とか(読んでいると、狆の顔がうわっと浮かんできて気持ちが悪くなってくる)、江戸時代の各藩に伝わる“これ食っちゃいかんリスト”など、それを知ったからといって出世の役には立つまいが、知ったことによって「ああ、人生がひとつ豊かになった」と思えるような知識を次々と紹介してくれる。
 震災を体験して、古文書の中の地震を調べる話もある。巨大地震はごくふつうに日本を襲い、ごくふつうに大量の人が死んでいる。しかし昔は放射能漏れなんてものがなかっただけマシか。

週刊朝日 2012年12月14日号
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