僧侶の歌

話題の新刊

2012/11/21 16:27

 60冊にも及ぶ日本の歌人のアンソロジーの中の1冊で、僧侶たちの歌ばかりを集めたユニークな和歌選集である。貴族たちによる勅撰和歌が中心とすれば、僧による歌はその周縁にあるもので、その多様性が魅力だろう。
 「山の端のほのめく宵の月影に光もうすく飛ぶ蛍かな」と、ありのままの自然の美しさを詠い、そこにこそ本然があるとした道元禅師、「跳ねば跳ねよ踊れば踊れ春駒の法の道をば知る人ぞ知る」と踊り念仏を鼓舞する一遍上人、「釈迦といふ悪戯者が世に出でて多くの人を惑はするかな」と皮肉る、反骨にして風狂自在の一休和尚など、それぞれの個性と信念が反映され、面白い。
 さらには、「思はじと思ふも物を思ふなり思はじとだに思はじや君」といった禅問答のような歌から、民衆への布教のためか、わかりやすく説教じみたものまで、実にさまざまな歌が集められている。
 それぞれの歌に付けられた2~4ページほどの解説によって歴史的背景や詠み手の人となりもわかり、読み物としても楽しめる本だ。

週刊朝日 2012年11月30日号

僧侶の歌

小池一行

amazon
僧侶の歌

あわせて読みたい

  • 死してなお踊れ 一遍上人伝

    死してなお踊れ 一遍上人伝

    週刊朝日

    3/2

    黄金輝くか!山吹の花 ~平安和歌に見られる山吹~

    黄金輝くか!山吹の花 ~平安和歌に見られる山吹~

    tenki.jp

    4/6

  • 僧侶相手にカフェで文句? 被災者の心をケアする仏教者たち

    僧侶相手にカフェで文句? 被災者の心をケアする仏教者たち

    AERA

    10/15

    盆の迎え火は生者の心を照らすもの~平安文学に見られるお盆~

    盆の迎え火は生者の心を照らすもの~平安文学に見られるお盆~

    tenki.jp

    8/10

  • 梅雨の闇夜に揺らぎ舞う蛍の光~平安和歌に見られる蛍~

    梅雨の闇夜に揺らぎ舞う蛍の光~平安和歌に見られる蛍~

    tenki.jp

    6/28

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す