現在14歳の藤沢里菜は、11歳6カ月という史上最年少で囲碁のプロ棋士となった。故・藤沢秀行名誉棋聖の孫にして藤沢一就(かずなり)八段の娘だが、祖父や父に教わったことはほとんどない。

 6歳のとき、初めて行った碁会所で朝から晩まで集中して打った。その姿を見た母・えり子さんは、普通の子とは違うと感じた。その日から、母と娘は突き進んだ。

 テレビを捨てて、ネットも友達と遊ぶのも禁止。学校から帰ると毎日、囲碁道場に通った。離婚して女手一つで育てていたえり子さんは、働きながら送り迎えをし、夕食の弁当を作って届けた。道場に通いやすい所に引っ越しもした。

 毎年1人しか受からない女流棋士採用試験には3度目で合格した。テレビを買ってもらい、初めて知ったAKB48が大好きになってコンサートへも行った。しかし、3年目の今年は負けが込んでいる。

「3時間の持ち時間がなかなか使いきれなくて…。実力不足です。もっと勉強しないと」

 テレビはやめた。高校へも行かない。中学生の勝負師は、再び突き進もうとしている。

週刊朝日 2012年10月26日号