小川紗良さん(撮影/写真部・張溢文)
小川紗良さん(撮影/写真部・張溢文)

 NHK朝ドラなどに出演し女優として活躍する一方、早稲田大の学生時代に是枝裕和監督に師事し、映画監督としても活動する小川紗良(25)。25日には、初めて長編映画監督を務めた映画『海辺の金魚』が全国公開され、それに先立ち同タイトルの小説も出版した。「女優」「映画監督」「小説家」という3つの顔を持つ小川紗良の実力の秘密に迫った。

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「役者として駆け出しのころは映画監督や小説家までできるとは想像していませんでしたが、やりたいとは思っていました。周りに恵まれて、思い描いた道を歩めていると思います」

 物静かな口調でこう語るが、「思い描いた道を歩めている」という言葉からは、強い信念を感じさせる。

 女優として注目されたのは、NHK朝の連続テレビ小説『まんぷく』。主人公・福子と萬平の娘・幸を演じ、高い演技力が話題になった。昨年はドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』に出演し、乳がん患者役を好演した。

 他方、映画監督としても学生時代からキャリアを積んできた。早稲田大在学中には映画サークルに所属し、『万引き家族』でカンヌ国際映画祭最高賞パルムドールを受賞した同大教授、是枝裕和監督にも師事。3本の短編・中編映画を監督し、若手登竜門の映画祭で入選するほどの実力派だ。

 そして今回、『海辺の金魚』(25日公開)で初めて長編映画の監督を務めた。映画に対する強い思いはどこから出てくるのか。

「初めて映像を撮ったのは高校1年生のとき。役者の仕事は高2から始めたので、実は役者よりも早いんです。学校行事の記録を撮って、みんなに喜んでもらえた経験が忘れられない。それが映画監督にこだわる原点です」

『海辺の金魚』は、児童養護施設で暮らす18歳の女子高校生と、新たに入所してきた8歳の少女との交流を描く作品だ。ひとりの少女が「自分の人生を歩き始める瞬間を描いた物語」だという。同映画のプロデューサーを務めた東映の小出大樹さん(29)はこう評価する。


インタビュー中の小川紗良さん(撮影/写真部・張溢文)
インタビュー中の小川紗良さん(撮影/写真部・張溢文)
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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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