記者会見が行われた会場の外では、市民ら約30人が集まり、五輪開催中止を求める声をあげていた(撮影/上田耕司)
記者会見が行われた会場の外では、市民ら約30人が集まり、五輪開催中止を求める声をあげていた(撮影/上田耕司)

 状況が刻々と変わっておりますので、そういった状況が変わっている時には無観客も覚悟をしておかなければいけないと考えながらしっかりとシミュレーションしていきたいと思っています」(橋本会長)

 全国の公立の小中高の学生128万人を観戦させるという計画の「学校連携」についての質問も出た。

「学校連携につきましてはいろいろな自治体からのご意見もありますけども、東京五輪・パラリンピックを若い世代の人たちが見て、一生の思い出になる、スポーツの力を感じてもらうという非常に意義のある部分もありますのでね。われわれとしてはそういう意義のほうをできるだけ活かすことができないかと思っています」(武藤氏)

 と、当初の計画を諦めたわけではなさそうだ。

 会見は30分余り。まだ記者が手を上げ続けているのに、強制終了。橋本会長は終わるとすぐさま会見場を後にした。

 会見場の外に出ると、市民団体「2020オリンピック災害」おことわり連絡会の30人ほどのオリンピック開催に反対する集会が開かれていた。

 口々に、「オリンピックより命を守れ」「オリンピックは中止だ」「おうちに帰れ、コーツさん、ステイホーム、バッハさん」などと訴えていた。

 集会の輪の中にいた男性は、こう語った。

「4月からずっと毎週金曜日、ここでやってます。SNSでだいぶ拡散し、徐々に集まって来る人が増えました。最初は10人くらいだったんですが、最近は30~40人くらい集まります。感染が収束していないから、私はまだ中止はあると思う、諦めてはいません」

 70代の元教員の女性は「無観客というのは怪しい。橋本会長らは観客を入れたそうですよね。最終的に追い詰められて無観客ということはあるかもしれませんけど、ギリギリまで入れようとするんじゃないですか。まともな感覚なら、こんなコロナの状況だったらオリンピックを止めますよ」などと語った。

 東京五輪・パラリンピックまであと1カ月。分科会の提言は、どう受け止められるのか。(AERA dot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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