90年代からゴルフ用品メーカーの販促を担っていた筆者は、プレー減少の深刻化、外資によるゴルフ場の買収と倒産、ゴルフ会員権の価格が下がり紙くず状態に……といった冬の時代を体験しており、閉店や倒産に陥る販売店も間近に見ていた。

■「接待ゴルフ」から脱却できるか

 この第4次ブームに乗ってゴルフ業界が再興できるかどうかは、「接待ゴルフ」から脱却し、スポーツとしてのニューゴルフが定着するかどうかにかかっている。そのためには、将来のゴルフプレイヤーを増やすべく、いまから種をまいておくことが必要になるだろう。

 たとえば、子どもゴルフ体験教室。プラスチックのボールやクラブでまずはボールを打つゴルフの楽しさに触れる機会を設けていく。中学、高校にゴルフ部を作る運動は、2019年「ジュニアゴルファー活性化プロジェクト」(日本高等学校ゴルフ連盟とゴルフ業界3社)により動き出したばかりである。同連盟によると、野球部がある高校は約4000校、野球人口は14万人以上だが、ゴルフ部があるのは現状、中学・高校を合わせて362校、4200人ほどしかない。

 多くの業界と同様、ゴルフ業界も「マーケティング・マイオピア状態」に陥っている。これは、近視眼的に了見が狭くなり、顧客の立場に立った広い視野で全体最適をはかることなく、自身の価値や連携を意識、理解せずに市場を縮小化、衰退させてしまう状況を指す。たとえば鉄道業界は、単に人を運ぶ路線と考えるのではなく、駅構内のショッピングエリアや沿線の宅地、郊外のレジャー施設の開発をおこなうことで、顧客と業者のwin-winの関係を生みだしている。ゴルフ業界でも、顧客志向による川上から川下への一気通貫システムの再構築が望まれる。

 そのような観点からすれば、たとえば女性プレイヤー向けにファッションとしてのゴルフウェア、キャップ、レインコート、サングラスなど、機能性ある日常使いを展開してみるのもいいだろう。

 ゴルフ業界をゴルフそのものにたとえるなら、谷や海越えさえあり、バンカーも池もある長い18番ホールのなかで、業界のプレイヤーそれぞれが、クラブの役割に応じたグリーンへのナイス・ショットやリカバリー・ショットが求められている。一人の優勝者ではなく、ゴルフ業界全体が勝者になる最後のチャンスだ。

(文/新山勝利)

●新山勝利(にいやま・しょうり)研修セミナー講師、マーケティング・コンサルタント、大学講師。日本商業学会、日本マーケティング学会、日本プロモーショナル・マーケティング学会・正会員。顧客満足を高める売場づくり、販売促進、店舗の活性化(ミステリー・ショッパー、マニュアル作成)のノウハウを提供する。メーカーのリテール・サポートにはじまり、全国の商工会議所など団体組織、広告代理店、卸売業、量販店、チェーン店等でコンサルティングを展開。他業界の豊富な成功事例の写真や図表を用いた、わかりやすい理論的な説明が特徴。飲食店の経営者経験もある。食べログで3.50点を達成するため、飲食店のコンサルティングでは、点数を分析したデータ主義で売上向上をはかる。また多数の専門誌に執筆。著書に『売れる商品陳列マニュアル』(日本能率協会マネジメントセンター)など。ホームページはhttp://www.ureru.jp/