インタビューに答える高知東生(撮影・小黒冴夏)
インタビューに答える高知東生(撮影・小黒冴夏)

―俳優として再始動していますが、演じてみたい役は?

 かつて出演したドラマで薬物の演技指導を監督から受けたときに「本当はそうじゃないんだよな」と背中に嫌な汗をかきながら、いつも喉まで出かかっていた。許されるのか分からないが、未だ誤解の多い薬物依存の本当の姿を演じてみたいと思っている。

―同じ悩みを抱える人たちにメッセージを。

 壁に突き当たっているときは成長が止まっている感じがする。竹には節がある。どんな時も節が大事。その節がないと僕はやはり成長できない。節を自分と向き合うことと例えるようにしています。良いことも悪いことも意味がある節。自分が成長しているから節に突き当たっているだけだと信じたい。次の節にいこうぜと。節がないと、土台がグラグラで成長していけない。節に当たったじゃん。「ようこそ節」と考えておけばいい。目の前の節を信頼できる人と一緒に乗り越えていこう。

 いまは啓発ドラマなどに出演させてもらっている。再起とともにリカバリーカルチャー、あらたな文化を作っていきたい。声を出せない人に、ひとりじゃないぞと。つらく思い出したくない記憶を笑顔に変える。元気で頑張って生き直すことが原動力になる。仲間に助けてもらったから今の自分があるんです。だから早く恩送りをしたい。

 高知に寄り添い、回復プログラムをサポートするのは、田中紀子さんだ。依存症回復支援活動グループを率いる田中さんは「高知さんならきっと生き直せる」と自らアプローチしたという。

「依存症の人にとってありのままの自分を認めることは本当につらいことだと思います。12ステップをやり遂げられる人は実はそれほど多くありません。高知さんとはじめて向き合って話した時、自身の生い立ちから振り返ってプログラムを実践すればきっとよくなると思いました。今は亡き高知さんの父親が大物組長であること、元の奥様とのことも黙っているとデタラメを言われるから全部オープンにしたらと助言したんです。高知さんが自著(「生き直す」)に勇気をだして全て書き連ねたらやっぱり何も言われなくなったんです」(田中さん)

 自身と向き合い、一日一日を懸命に生き直している高知。仲間に恩送りできる日はもう間もなくだ。(野田太郎)