インタビューに応じた高知東生(撮影・小黒冴夏)
インタビューに応じた高知東生(撮影・小黒冴夏)

「一度の失敗で人生は決まらない。俺は今そう信じて生き直してる。どんな道が開けるのか自分でも良く分からないが、カッコ悪く、ダサく、もがいているありのままの姿をさらしながら生き抜くことが、俺の役割の様な気もする。上を目指す生き方より、変化し続けたい。そういう意味で変わり者でいたい」(4月22日のツイッターより)

 俳優の高知東生のオープンでストレートなツイッターでのつぶやきが若い世代を中心に注目を集めている。フォロワー数は3万7000人を超えている。高知は個性派人気俳優として活躍中だった2016年、覚せい剤取締法違反の罪で逮捕・起訴され猶予判決を受けた。あれから5年。 高知は薬物依存からの回復プログラムを受講しながら、懸命に自分と向き合う日々を送っている。高知をインタビューした。

*  *  *

 5月某日。黒のシックなニットセーター姿で会場に現れた高知。

「よろしくお願いします。今日は喋りますよ」と満面の笑顔に白い歯がこぼれる。

―笑顔が素敵ですね。

 照れるじゃないですか。いまは本当に仲間といる時間が楽しいんです。ツイッターを通して、縁のないだろう人たちから共感、応援してもらっていることがすごくありがたい。生き直すというところからつながってくる人たちは宝物です。僕のつぶやきは本音だから、リプを読んで逆に共感して、ああそうなんだと僕の方が励まされる。狭かった自分から拡がっているのはフォロワーの皆さんのおかげ。心の処方箋ですよね。

―コロナ禍で自分と向き合う時間が増えました。

 自分とここまで向き合うことになったきっかけは、やはり逮捕された時の衝撃が大きかったから。誰にも会わず、弱っている自分につけ込んで利用しようとする人もいた。やさしいことばで近づいてくるから、何が間違いで何が正しいのか。自分で選別しなくてはいけない。妄想が妄想を呼んでいって余計に苦しくて。死んで償うべきか。自分を責めてきた中で答えが見えなかった。自分は道を外し、家族を悲しませ、大切な人たちを裏切った。どうしたらいいかわからない。世の中から排除されて、もう終わりだと考えていた。そんな時に仲間と出会った。自分はひとりじゃない。反省と共にバッシングから身を守ること、自分との向き合い方を知って、素直になれる自分にぐっすり眠れる日が増えていき、これまでの妄想が溶けていったんです。
 

次のページ
12の回復プログラムとは?