江東区潮見にある再改修中のコロナ療養施設。 向こうには京葉線の電車が走る(撮影・上田耕司)
江東区潮見にある再改修中のコロナ療養施設。 向こうには京葉線の電車が走る(撮影・上田耕司)

「この案件を誰が決めて、こういう結果を招いたかというと、官邸です。その一番、高い位置の人は首相と和泉首相補佐官です。和泉補佐官はこの案件の責任者だった。この件は『関係者協議会』で協議されましたが、その議長は和泉補佐官です」

 関係者協議会とは「新型コロナウィルス感染者(軽傷者、無症状者)の宿泊療養施設の整備・運営に関する関係者協議会」の略称だ。

 第一回の会合があったのは昨年4月10日。東京都千代田区霞が関の中央合同庁舎4号館11階の特別会議室で、「関係者協議会」が開かれた。

 出席者は議長である和泉補佐官、東京都副知事、内閣官房、国交省、厚労省、防衛省、警察庁、警視庁などの関係省庁の担当者たち。

 その後、関係省庁との打ち合わせで「実際に(医療施設の)運営に当たると想定しているのは、関東にあるA病院グループ。内諾は得ている」「運営主体はこうした医療法人を活用すべきである」などと和泉補佐官らが発言したという。

 さらには20年4月、A病院グループの責任者との打ち合わせの席上、「(厚労省の)B審議官から自衛隊の医官、看護官の派遣も検討している」などの発言もあったという。政府関係者がこう語る。

「A病院グループに4つの施設の運営をゆだねることになったら、国や東京都からのかなりの額の運営委託費が入ったはず。菅さんがA病院グループと付き合いがあり、和泉補佐官に推したと聞いています。だが、警察宿舎を改修してコロナ宿泊施設にするという彼の計画は、お粗末過ぎた。施設はプレハブでバス、トイレが共用です。酸素吸引のための配管設備などもない構造上の欠陥もあり、医師など専門家からリスクが高くて危険だという指摘がありました。東京都は当時、コロナ感染者を受け入れてくれるホテルを十分に確保しており、難色を示していた。しかし、A病院グループを紹介した菅さんの顔をつぶすわけにはいかず、和泉補佐官が突っ走ったんです」

大田区城南島の施設には改修前のコロナ療養棟に貼った「検疫棟」の文字が…(撮影・上田耕司)
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大田区城南島の施設には改修前のコロナ療養棟に貼った「検疫棟」の文字が…(撮影・上田耕司)

 厚労省関係者も経緯をこう明かす。

「当初は臨時の医療施設にすることも考えていたので、東京都は直接運営できない。代わりに運営してもらえる医療機関はないか、といろんな方面にあたった結果、A病院グループが協力してもよいというご意向をお持ちだと打ち合わせで聞いたので、厚労省から東京都にその話を伝えた」

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