4月28日早朝、逮捕され、自宅を出る須藤容疑者(C)朝日新聞社
4月28日早朝、逮捕され、自宅を出る須藤容疑者(C)朝日新聞社

「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん(当時77)が2018年5月に覚せい剤中毒で怪死した事件で4月29日午前、和歌山県警は殺人容疑などで逮捕した元妻の須藤早貴容疑者(25)を送検した。

【写真】連行中の須藤容疑者を正面からとらえたショット

 事件当初から野崎さんが死亡した現場には、須藤容疑者と家政婦しかおらず、「疑惑の人物」と和歌山県警にマークされていた。

「須藤容疑者が覚せい剤を入手していたという接点がしっかりと得られたことが重要だった」(捜査関係者)

 しかし、和歌山県警はこれまで数十回にわたり事情聴取してきたが、須藤容疑者は容疑を否認。発想を転換し、須藤容疑者しか犯行に及ぶことができない、動機があるという「消去法」で捜査をしてきたという。

 和歌山県警の逮捕時の記者会見では、須藤容疑者の認否については明かされていない。

「これまで3年近く否認してきたわけや。逮捕されたから、すぐやりましたなんて、まあ喋らんよ」(前出の捜査関係者)

 覚せい剤という凶器を使っての密室での犯行。目撃証言もないことで捜査は何度も暗礁に乗り上げた。しかし、和歌山県警では過去にそっくりの事件があった。

 1998年7月、和歌山市園部の夏祭りの屋台に出されていたカレーにヒ素が混入され、4人が死亡、67人がヒ素中毒となった和歌山カレー事件だ。

 カレーの調理現場には複数の住民がかかわり、足を運んでいた。逮捕されたのは、林眞須美死刑囚(死刑判決確定)で、立件のポイントなったのが、一般には流通していない、猛毒のヒ素を所持していたこと。カレーの調理現場で林死刑囚が一人になる場面があった、近所との折り合いが悪く、トラブルが多々あり、カレー調理時も険悪な雰囲気だったことで激高したことなどが動機とされた。つまり、林死刑囚しか犯行に及ぶことができなかったという「消去法」で立件したのだ。

 和歌山県警は須藤容疑者が覚せい剤を入手していたことは認めている。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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密室の覚せい剤混入の謎