八丁畷駅そばにある芭蕉句碑。「麦の穂をたよりにつかむ別れかな」は、江戸を発つ芭蕉が詠んだ句
八丁畷駅そばにある芭蕉句碑。「麦の穂をたよりにつかむ別れかな」は、江戸を発つ芭蕉が詠んだ句
【八丁畷】長い一本道で旅立ちの寂しさを思う

 八丁畷駅(神奈川県川崎市)そばには芭蕉句碑があります。「麦の穂をたよりにつかむ別れかな」。元禄7(1694)年、故郷の伊賀に向けて旅立った芭蕉を見送った門人たちに向け読んだ句です。

 この句碑だけを見るとなにも思わないかもしれないのですが、日本橋からここまでおよそ20キロ。賑やかな日本橋や品川、川崎を過ぎて八丁畷の一本道(畷とはまさに一本道の意味です)を実際に歩いてみると、疲れも相まってか「ああ、ずいぶん旅をしてきたな。もう戻れないかもしれない……」と、なんとなく寂しい気持ちになってくるから不思議です。芭蕉や見送った門人の気持ちを思い、しんみりした気分になるのです。(私だけかもしれませんが、ぜひ試してみて下さい)

東海道最初の難所として知られた権太坂。急な勾配が続く
東海道最初の難所として知られた権太坂。急な勾配が続く

【権太坂】東海道の最初の難所、旅のつらさを感じる

 保土ヶ谷宿(神奈川県横浜市)を過ぎると江戸を出てから最初の難所といわれた権太坂に差しかかります。箱根駅伝の中継でその名を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。箱根駅伝のルートとなっている権太坂は国道1号の坂で、旧道の権太坂は別の場所にあります。箱根駅伝でもレース展開のカギを握る難所の権太坂ですが、旧道もまた急な坂道。上りきるには息が切れるような勾配です。

 坂の近くには行き倒れた人を葬ったという投込塚の碑が残り、そこがまさに難所であったことがひしひしと伝わってきます。

■自分の切り口で自由に楽しめる東海道

 ほかにも紹介したい見どころがたくさんあるのですが、続きはぜひご自身で見つけて下さい。興味がある場所は密を回避しつつ、現地に行って歩いてみるとまた違った気付きが得られるかもしれません。皆さんそれぞれの東海道歩きの楽しみ方を見つけていただけると、東海道好きの一人としてこれほど嬉しいことはありません。