ところがこのコロナ禍で、水泳授業の中止が全国的に相次いだ。
「昨年はどこの学校のプールも『浮いて待て』教室が行われませんでした。今回の事故で溺れた子どもは小2生。1回でも学校で体験していれば……」(齋籐教授)
■悪条件が揃っているGW
なお、「背浮き」は身に着けた衣服や靴の浮力を十分に生かすことも大切という。
「靴を履いていれば、靴の浮力で足が浮きます。服を着ていれば、そこに空気が溜まって浮きます。ですから、冬は意外と助かるケースが多い。厚着で空気の層ができますから」
実は4月、5月、特にゴールデンウイークの時期は今回のような事故が頻発するという。暖かくなって薄手の服で水辺に出かける人が増えるシーズン。でも、水はまだ冷たい。斎藤教授によれば、救助に入った人もあまりの水の冷たさで体が動かなくなり、救助どころか呼吸もままならなくなり、溺れてしまうこともあると言う。小さなペットボトルでも有効な浮力が得られるので、それを溺れている人に投げたり釣り具の先端につけて渡したりするのも効果的だ。
「そのペットボトルを胸に抱いて、背浮きになって待っていなさい、と。溺れている人が浮いていなくてはいけない。その間にできるだけ早く119番に電話して救助隊を呼ぶ。それが重要です。しかし、わが子が目の前で溺れていれば、親は飛び込んでしまいがちです。私たち水難学会は、飛び込んだとしても親子で背浮きになって浮いていてください、と言っています。いっしょに水面に浮いて、救助を待ってください」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)