写真家、評論家らの激論の末に選ばれた作品152点。写真表現の30年展 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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写真家、評論家らの激論の末に選ばれた作品152点。写真表現の30年展

「遥かなる祖国・南米移民一世の肖像」より ブラジル・パラナ州コロニアルエスペランサ 1985年(撮影:新正卓)

「遥かなる祖国・南米移民一世の肖像」より ブラジル・パラナ州コロニアルエスペランサ 1985年(撮影:新正卓)

 東京都写真美術館(恵比寿)で「日本の現代写真 1985-2015」展が開催されている。会期は4月25日まで。

【写真】これぞ日本の現代写真!

 この展覧会は昨年5月に創立70周年を迎えた日本写真家協会(JPS)が主催したもので、会場には152点の作品が展示されている。

 はじまりは上田義彦の有名な作品。漆黒をバックに卵型のオブジェを手にした前衛舞踏家・天児牛大の凛とした白い肉体をとらえている。続いて、新正卓が撮影したブラジル移民一世のポートレート。花をくわえたユーモラスなポーズと哀愁漂う表情とのギャップが胸に染みる。

 3番目は鋤田正義のライフワークだったデビッド・ボウイ。ここでふと思った。(代表作ではないんだ)。カメラを真っ直ぐに見据えたボウイは男くさい髭面で、この作品を選んだ明らかな意図を感じた。

 さらに、山内道雄、宇井眞紀子、石内都、深瀬昌久、長島有里枝、繰上和美、鷲尾倫夫、平敷兼七……。

(こんな調子で152点もあるのか)。そう思うと足が止まった。いや、立ちすくんだ、というほうが正確か。開催にこぎつけるまでに要した膨大な時間、うんざりするほど根気のいる作業が思い浮かんだ。
「藤島利彰一家」 東京・藤島氏自宅 1988年(撮影:立木義浩)

「藤島利彰一家」 東京・藤島氏自宅 1988年(撮影:立木義浩)

今回の編纂作業には写真家以外の「目」が必要と判断

 会場を一巡した後、JPSの山口勝廣専務理事に話を聞く。第一声は安どの声。

「こんな状況下ですけれど、とにかく、開けてよかった。でなかったら、編纂その他、一生懸命にやってきた人たちが気の毒ですよ。これだけの数をまとめようとすると、トラブルをどう処理するか、みたいなことにかかりっきりなりますから」

(やはり、そうなるよなあ)と思う。山口さんの説明を聞いて実感したのは、この展覧会は単に著名写真家の作品を集めて並べたものではまったくなく、「写真表現の歴史」というテーマと真摯に向き合い、それを地道にまとめたもの、ということだった。

 これまでJPSは写真の歴史展をたびたび開催してきた。本展は95年に開いた「戦後50年-日本現代写真史<記録・創造する眼>」展の続編となる。

 前回までと大きく異なるのは編纂委員会のメンバーで、JPSの会員だけでなく、外部の有識者が加わった。その理由について、山口さんはこう語る。

「1985年から2015年までの写真表現の歴史展ですから、その間に圧倒的に大きな変革があった。つまり、フィルムで記録してきたものが、デジタルになってきた。その作品を選ぶには写真家以外の『目』が必要だろうということで、飯沢耕太郎さん、上野修さん、鳥原学さん、関次和子さん、多田亜生さんに手助けをお願いしたんです」

 JPS会員の編纂委員は野町和嘉会長、松本徳彦副会長、そして山口さんのほか、15人が加わった。監修は田沼武能元会長が担当した。

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