写真家・野町和嘉の原点。砂漠の民をのめり込むように写した20代 (1/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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写真家・野町和嘉の原点。砂漠の民をのめり込むように写した20代

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儀式を終えたトゥアレグ族戦士たち アガデス、ニジェール/1975年(撮影:野町和嘉)

儀式を終えたトゥアレグ族戦士たち アガデス、ニジェール/1975年(撮影:野町和嘉)

 写真家・野町和嘉さんの作品展「サハラ」が1月5日から東京・半蔵門のJCIIフォトサロンで開催される。野町さんに聞いた。

【写真】野町さんの作品「サハラ」のシリーズ

 失礼ながら、作品図録の終わりにある写真を見ていると、はたと気づき、笑いがこみ上げてきた。白い布で頭と顔を覆った3人の砂漠の民が岩を背に座り、真っ直ぐな視線をこちらに向けている。キャプションに目を移すまで右端の人物が野町さんだということに気づかなかった。

 私が野町さんの作品に初めて触れたのは30年ほど前。写真集『長征夢現―リアリズムの大地・中国』(情報センター出版局)のページをめくると、壮大なスケール、緻密な取材、卓越した表現力に圧倒された。

 そんな野町さんのドキュメンタリー写真の原点といえるのが1970年代、北アフリカ、サハラ砂漠での取材。今回の作品展はその核心部、74、75年に撮影したモノクロ写真を中心に展示する。

 野町さんの自宅を訪れ、うかがった話は、まるで冒険活劇のようだった。

 四輪駆動車、ランドローバーで疾走する広大な砂の大地。追いかけるのは、チャドからリビアへと向かう約240頭のラクダを引き連れた遊牧民のキャラバン。

「だけど、そのうちの一頭が遅れ出して、やがて歩けなくなったんです。この写真は、それで隊列が止まったところ。で、そのラクダを殺すんです。使えそうな肉だけとって、去っていく」

 ひと呼吸おき、「すごいところだな、と」つぶやく。
洞窟住居でくつろぐ男たち ジャネット、アルジェリア/1978年(撮影:野町和嘉)

洞窟住居でくつろぐ男たち ジャネット、アルジェリア/1978年(撮影:野町和嘉)

過酷な地で暮らす人々の背後には何があるのだろう?

 極限の土地で体を張って生きる人々。野町さんはその姿に共感し、そのなかへ飛び込んでいった。夕方になると岩陰などにテントを張り、夜を明かした。過酷な自然に翻弄されつつも、自由だった。体力と好奇心がみなぎっていた。

「何よりね、20代ですから。ほんとにもう、かつかつの金で。途中で金がなくなって、助けてもらったりとか、いろいろなことがありましたよ」

 作品は、儀式を終えたトゥアレグ族の戦士たち、熱風が吹き抜けるテントで過ごす少女、白い布にくるまれた赤ん坊など、遊牧民の生活に密着し、丹念に写しとっていることが伝わってくる。

「いま見返すと、新鮮な感じがありますね。とにかく人間に対する興味。あのころは情報もないから余計に面白かった」

 それにしても、よくぞここまで人々の間に分け入り、すぐ間近から自然な表情をとらえたものと思う。

「別に彼らと生活を共にしているわけじゃないんだけど、現地に長くいて、日焼けして、汚れてくると、だんだん違和感がなくなるんじゃない? 向こうから見ても(笑)」

「人間が生きる、という面では厳しい場所」だった。しかし、意外にもその暮らしぶりは落ち着いていたという。

「その背後には何があるんだろう? と、文化や宗教への興味がどんどん湧いてきましたね。それがきっかけとなり、サウジアラビアのメッカに行ったりとか、さまざまな宗教を取材するようになっていくんです」

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