イラスト/ポチ子
イラスト/ポチ子

 高額な費用がかかる不妊治療への保険適用に向けて、来年1月から国の助成制度が大幅に拡充されます。2015年から3年間にわたり、不妊治療の経過をブログで発信し続けたポチ子さん(筆名)は、体外受精で第1子を授かるまでに、計14回の採卵と8回の移植を試み、総額約640万円かかったといいます。40歳で出産したポチ子さんに治療を振り返ってもらい、不妊で悩む人に必要な支援について考えてみました。

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 ポチ子さんのブログのタイトルは、その名もズバリ「ダメ嫁ポチ子の不妊漫画」。壮絶な治療をこなす日々を、ほのぼのしたイラストでちょっぴり自虐的に描き、不妊に悩める女性の共感を呼んだ。子どもができない不安を誰にも打ち明けられない不妊の当事者にとって、インターネットでの情報収集は欠かせない。閲覧数は、多い月で400万件を超えた。

「私自身、不妊と闘っている人の体験記に勇気づけられたこともあって、『ポチ子も誰かの励みになるかもしれないよ』という夫の言葉をきっかけに、ブログを始めました。わりとすぐに『ブログトピックス』にあげてもらい、アクセスが増え、最初の9カ月は毎日更新していたので、見に来てくださる方もどんどん増えていきました」(ポチ子さん)

 ポチ子さんが自己流で「妊活」を始めたのは、結婚3年目。基礎体温をつけ、排卵日前後に夫婦生活をもっても、毎月律儀に生理がきた。そして、敗北感に襲われながら妊娠できないまま、あっという間に1年が経ってしまう。

「妊娠は奇跡 みんな割と簡単に奇跡を起こしてる気がするのに 妊娠する事ってこんなに難しかったんですね…」(2015年11月のブログから)
 
 36歳のとき、夫婦で都内の不妊専門クリニックAの門をたたいた。子宮や卵管、ホルモンの状態を調べる検査はすべて異常なし。「原因不明の不妊症」と診断された。医師の指導のもと、妊娠しやすい時期を狙う「タイミング法」を4回試すが、「あなたがこの方法で妊娠する可能性は2%」と医師に言われ、体外受精に進むことになる。

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