撮影:関根大樹
撮影:関根大樹

難しい。でも、つながればきっと作品になる

 作品に写っているものは「ただ家があり、壁があってという、まったく大したことないもの」と言う。確かにそのとおりなのだが、その被写体の配置と組み合わせが面白く、目を引きつけられる。

 ふと、画家・岸田劉生の作品「道路と土手と塀」(1915年)が思い浮かんだ。そこに描かれているのは、青空に向かって伸びる赤土の坂道という、何の変哲もない風景なのだが、視線が画面の奥に引きつけられる不思議なインパクトがある。

 関根さんの作品からも、被写体の配置、視線誘導、色面の大きさの違いによってとられたバランスなど、構図のさまざまなテクニックが思い浮かぶ。

 ところが、意外なことに「構図の美しさ、みたいなのを拒否したい」気持ちがあるという。「いい感じに被写体を配置する、というより、ただただ撮りたいものをすべて正方形の画面の中にぎゅっと押し込めたい」。

 それは、さまざまな社会空間が重なり合って都市が成り立っていることのメタファーだ。実際にはそんなものが写真には写らないことは十分承知している。

「でも、そういう『都市のありかた』と『写真』を、何とかつなげられるんじゃないかと思って撮っていました」

「それは難しいですね」と、私が言うと、「難しいです。でも、つながればきっと作品になる、と思っていました」。

 その思いを関根さんは写真展案内にこう綴っている。

<街路を行けば、もはや誰の手にも負えない複雑な重層構造が立ちはだかる。一度に知覚できる限度をゆうに超えるオブジェクトの断片が四方から迫る、その襞に分け入ってファインダーを覗き込むとき、風景は透明な輝きを放つ>

                  (文・アサヒカメラ 米倉昭仁)

【MEMO】関根大樹写真展「Wandering Nature」
エプサイトギャラリー 10月30日~11月12日
同名の写真集も発売される。
(Place M、幅255mm×高さ245mm、64ページ、写真60点、ソフトカバー、税込み3850円、ISBN:978-4-905360-34-6)
関根さんのホームページで購入できる。