撮影:関根大樹
撮影:関根大樹

写真家・関根大樹さんの作品展「Wandering Nature」が10月30日から東京・丸の内のエプサイトギャラリーで開催される。関根さんに話を聞いた。

【写真】作品の続きはこちら

 最初、「Wandering Nature」というタイトルを目にしたとき、てっきり森の中をさまようようにして写した写真だと思ったのだが、目にした作品はまるで違った。自然とは正反対。都市を写した写真なのだ。まず、そのギャップに引かれたことを関根さんに伝えると、「それをちょっとねらったところもありまして」と、真剣な表情で語る。

「ネイチャーと聞いて、みなさんが思い浮かべるのは山や川、森だと思いますけれど、こちらが私にとってのネイチャーですよ、みたいな。この言葉に引かれた人をちょっと裏切るような感じを打ち出してみたかった、というところはあります」

 東京・目黒区で生まれ育った関根さんにとって、都市は「ただ身の回りにある自然なもの」だった。

撮影:関根大樹
撮影:関根大樹

都市の「本質」という意味でのNature

 このテーマで撮影を開始したのは2年ほど前。「写し始めたころから『Wandering Nature』というのが面白い言葉だなと思って、ずっとその言葉が頭の中にあったんです」。

 ちなみに、私の英語力のなさがバレてしまうのだが、「Wandering Nature」が「放浪癖」を意味する熟語だということを今回のインタビューで初めて知った。

 前回の関根さんの個展「反遠近法<contra-perspective>」(2018年)では東京近郊や北関東の都市を訪ね歩いた。今回の作品展ではさらにねらいを絞り、Natureという言葉の意味から広がる世界が写しとっている。

「Natureには『人間の性質』という意味があります。街中を放浪して、撮るということをずっとやってきましたから、そういう自分の性質を表す意味合いもあります。ほかにも、さまよう自然、例えばツタが絡まっている様子が写った写真がありますが、自然が都市の人工物の中にさまよい込んできている、みたいな意味もある」

 なかでも、やはり作品から強く感じるのは都市の「本質」という意味でのNatureだ。

「Natureと、ひと言で言ってもいろいろな意味があるように、都市というものをかたちづくっている『重層性』をメタファーのように表現できたらいいな、と思っています」

次のページ
都市の街並みの中にある、現象としての透明性