現在、四方さんはベルリンを拠点に活動し、ヨーロッパ各地で個展を開いてきた。2年前からは、アムステルダムにあるギャラリー「THE ART OF SEPTEMBER」のディレクター兼キュレーターも勤めている。

「ベルリンはアーティストがすごく住みやすい街で、さまざまな写真家、音楽家、ダンサーが大勢いる。彼らから刺激を受けて作品をつくれるようになったというか、自分のやりたいテーマが明確に見えてきたのはここに住んでからですね」

 ベルリンは交通の便もよく、日帰りでウィーンで仕事をしたり、一泊でイタリアで仕事をしたりしているという。そういう意味でも「すごくチャンスが増えた」。

 エンターテインメント業界では、これまでCDジャケットを写したり、映画のスチル撮影を行ってきた。しかし、今後は舞台の仕事にも挑戦したいと語る。

「例えば、宝塚のほんとうのよさって、その場に足を運ばないとわからない。もっといろいろな人に興味を持ってほしいと思うし、これまで自分が関わったことを写真とつなげてポスターとか、劇場に足を運ぶきっかけをつくれたら……。すごく夢がある仕事だと思うんです」

「Falling」から
「Falling」から

■何歳になっても好きなことをやってもいいんだ

 ちなみに、四方さんのホームページ(※)を見ると、「写真家ヴォルフガング・ティルマンスが好きだったのでベルリンに移住」とある(彼は世界的に著名な現代写真家だ)。

 あまりにも唐突な理由なので聞くと、「ノリです(笑)。どこに住もうかなと思ったときに、ベルリンには好きな写真家がいるし、いいんじゃないかな、と。この舞台、すばらしいから私も入ろうと思ったり。よく言われるんですよ、怖くないの、って。でも、怖いという感覚がない、というか、欠落していると思う。何かやる前に悩んだりしないし。そこに住みたいと思ったら、行かないほうが気持ち悪い」。

 ティルマンスは作品だけでなく、生き方や人柄が好きだという。私は知らなかったのだが、彼は写真だけでなく、音楽活動もしているらしい。

「ティルマンスのライブを聞きに行ったんです。すごく楽しそうなんですよ。ほんとうに好きなことを真っすぐに追及している感じ。写真も撮るけれど、音楽も好きだから、みたいな。それを見て何歳になっても好きなことをやってもいいんだ、と思ったんです。そんな人と同じ空気を吸っていると、やる気につながる。私もこんな楽しいおばちゃんになりたいと思いましたね。ふふっ」

(文=アサヒカメラ 米倉昭仁)

※ 四方さんのホームページ http://shikatakarin.photography/