世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。

【写真】誰もいない…閑古鳥が鳴く日本人御用達の居酒屋

日本人専用の夜の街「タニヤ」を歩く現地在住の日本人はほぼ皆無である
日本人専用の夜の街「タニヤ」を歩く現地在住の日本人はほぼ皆無である

■日本人需要が消えた街

 出口のみえないコロナ禍で、日本国内の疲弊感や閉塞感は尋常ではない。一転して海外に目を向けるとどうか。

『コロナ禍でタイ人が日本人を恐れる? 丸山ゴンザレスが指摘する“感染防止策”による思わぬ影響』(8月6日配信)でお伝えしたように、感染拡大を抑え込めているタイでは、新型コロナウイルスを国外から運んでくる恐れがあるとして、日本人を含め外国人に対する視線は厳しいものになっている。

 そして日本人が日本からタイに行くには制限があり、タイ在住の日本人も、一度日本に帰国してしまうと再びタイに入国するハードルは高い(現状の帰国するための条件もいつ変更されるかわからないと懸念する人が多い)。さらに帰国の費用は、航空券だけで50万円にもなるという。便数の削減が影響しており、費用面から帰国を諦める人もいる。

 そうした状況で、タイでは日本人をターゲットとしていたビジネスは危機的な状況に陥っているという。現地の友人はこう語る。

「バンコクの歓楽街であるタニヤには、以前は日本人駐在員がひっきりなしに来ていたのですが、いまではその姿を見ないです。日本の企業が、社員たちに夜の街へ出ることを禁止しているからです」

 さらにタイでは、入店前の利用者登録と、登録後は店の前にあるQRコードを読み込む仕組みがあり、それによっていつ、誰が入店したのかが管理されている。会社に内緒で来て、感染でもしようものならすぐにどこに行っていたのかが発覚してしまう。そうなれば彼らの立場がなくなってしまう。それを恐れて、夜の街から遠ざかる日本人が多いそうだ。

日本人御用達だった居酒屋も、閑古鳥が鳴いている
日本人御用達だった居酒屋も、閑古鳥が鳴いている

 そのため、日本人駐在員たちをターゲットにしていた居酒屋も軒並み売上が落ちている。

 現地在住の日本人たちはこの先、どんな展望を持っているのだろうか。

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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