久高島で。島の中央部から北部のカーベル岬までは神が通ると伝えられる真っ白い砂地の一本道が続く■ニコンZ 7・ニッコールZ 14-30mm f/4S・ISO200・絞りf11・1/125秒
久高島で。島の中央部から北部のカーベル岬までは神が通ると伝えられる真っ白い砂地の一本道が続く■ニコンZ 7・ニッコールZ 14-30mm f/4S・ISO200・絞りf11・1/125秒

 訪れたのは去年の夏。フェリーの運航は週に2回だけ。ただでさえ時間がかかるのに(鹿児島から片道10時間半)、台風の時期と重なって、鹿児島から行こうか、奄美大島の名瀬から行こうか、ぎりぎりまで迷いました。

 お盆の間は宿がないんです。この時期は島の人は祭りにかかりきりになるため、民宿は全部閉めてしまう。だから公民館に泊まるんです。でなければテント。公民館はぼくらの貸し切り状態でした。ぼくたちは余裕を持って早めに島に着いたんですが、その後、海が荒れて船が接岸できなかったんです。

 ボゼは島民が集まっている公民館の前の広場にやってくるんですが、出てくる前に特別にお願いして、一瞬だけ立ち止まって撮らせてもらいました。ボゼの姿をきちんと緻密に撮影して残したかったからです。

 久高島も初めて訪れた島です。沖縄本島の南東、フェリーで20分くらいのところにある細長い小さな島ですが、島全体が神聖な土地です。

 島の最北端にあるカーベル岬は、ハビャーンと呼ばれ、琉球開闢の女神、アマミキヨが降り立った地とされています。

 島の中央部からハビャーンまではクバの原生林が広がり(国指定天然記念物)、神はこの木を伝って降りてくるといわれています。そこに真っ白い砂地の一本道が続いている。神様の通る道です。そこに神様が下りてくる、という感じで写しました。

バラス島。西表島の北にあるこの小島はサンゴのかけらが波で寄せ集められて出来上がったもの■ニコンZ 7・ニッコールZ 14-30mm f/4S・ISO200・絞りf8・1/750秒
バラス島。西表島の北にあるこの小島はサンゴのかけらが波で寄せ集められて出来上がったもの■ニコンZ 7・ニッコールZ 14-30mm f/4S・ISO200・絞りf8・1/750秒

「行ってみたい日本の南の島」リストはまだまだいっぱいある

 いくつかの島の森で夜、星を写したんですけれど、ハブには用心しました。ハブは夜行性で、夜になると活発に活動するんです。奄美大島、やんばる国立公園(沖縄本島北部)でハブに遭遇しました。まあ、目撃した、くらいでよかったんですけれど(笑)。「夜、星空を見上げるときは足元にも気をつけないといけない」と、写真のキャプションに書いたんですけど、ほんとうにいるんですね。

 西表島にも通いました。この島は知っている場所も多いんですが、行くたびにいい写真が撮れます。

 写真展案内の写真はバラス島というところです。西表島の北にあるサンゴのかけらだけでできた小さな島。海の水とは思えないきれいさです。ほか、シャングルの新緑やマングローブの林でもいい写真が撮れました。

 最後の撮影は今年の春、西表島でホタルを撮ろうと計画していたのですが、新型コロナの事態であきらめました。

 写真展では南西諸島のほかにも伊豆諸島の八丈島の作品も展示します。

 東京から近いのに、アフリカか、ハワイか、といった感じのエキゾチックな写真が撮れる場所です。撮りたくなったらすぐに予定を入れて撮りに行ける距離感がいい。

 初めて宮古島を訪れてからもう50年近くになりますが、「行ってみたい日本の南の島」リストはまだまだいっぱいあります。

 今回、トカラ列島を転々と船で巡って、「海の色がこんなにきれいなところがあるんだ」「島の形が面白そう」と感じました。実際に行ってみたら、何もないかもしれないけれど、ぜひ、機会があれば行ってみたいですね。(文/アサヒカメラ・米倉昭仁)

【MEMO】三好和義写真展「日本の楽園島」
ニコンプラザ新宿 THE GALLERY 1+2で8月20日~9月7日、10月移転のニコンプラザ大阪 THE GALLERYで10月開催予定。同名の写真集(青幻舎、幅210ミリ×高さ278ミリ、128ページ、3千円+税)も発売する。