世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。

【写真】タイ・バンコクでは「客と嬢がフェイスガード着用で行為」に及ぶことも

これまではバイタクの運転手ぐらいしか見られなかったタイ国民のマスク姿。これからは一般的なものになるかもしれない
これまではバイタクの運転手ぐらいしか見られなかったタイ国民のマスク姿。これからは一般的なものになるかもしれない

■日本人の公衆衛生に対する“意識”は高いのか?

 日本人はコロナ禍以前から公衆衛生に対する意識が高く、諸外国に比べて新型コロナウイルス対策もそれなりにできていると思っている人は多いかもしれない。爆発的に感染が拡大している国と比べれば、確かにその通りであろう。

 しかし、日本人の間にある現状の危機意識が特別に優れていると言えるのだろうか。日本と比較して、感染者数を抑え込めているタイ在住の友人には、日本はどう映っているのか。

「タイの人たちからすると、日本が感染拡大を抑えこめていないことを不思議に思っているようです。公衆衛生への意識を含め、タイ人はこれまで、日本に対して“見習うべきところの多い国”と認識していました。実際、タイに住んでいる日本人は感染対策に気をつかっています。しかしそれはウイルスが怖いのではなく、社会的な評判を気にしているという側面が強い。会社から飲みに行くのを制限されている人もいるようです」

 会社からの“自粛令”は、タイのある感染拡大防止策によって、思いのほか徹底されているという。

「政府がどこの店に入るにもQ Rコードによる入店履歴の登録を義務付けているので、陽性になったらそれまでの行動が特定できてしまうんです。それを恐れて、日本人客がメインだった居酒屋は、いまだにガラガラのまま。逆に、タイ人やタイ在住のファラン(タイ語で「欧米の白人」という意味)に人気だった店はもう大盛況ですね」

 そういう意味では、新型コロナウイルスに対しては、結果的に日本人が一番警戒しているという感じはある。

 では、タイ人たちはどうなのか。友人は、「バンコクにいるタイ人はみんなマスクをしています」と話す。どうやら日本と同様に最低限の感染対策は浸透しているようだ。しかし、タイ人たちの“意識”を高めたきっかけは、日本人とは少し違うようだ。

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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