6年かけて撮り続けたアラスカの大自然と動物たち 写真家・佐藤大史が写す「地球」 (2/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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6年かけて撮り続けたアラスカの大自然と動物たち 写真家・佐藤大史が写す「地球」

米倉昭仁dot.#アサヒカメラ#動物写真
「23時ころ日が沈み、引き潮の浅瀬を歩いてグリズリーの親子がねぐらへと帰る。寝る前に授乳という仕事が待っている母グマの足取りはやや重そうだ」(佐藤さん)

「23時ころ日が沈み、引き潮の浅瀬を歩いてグリズリーの親子がねぐらへと帰る。寝る前に授乳という仕事が待っている母グマの足取りはやや重そうだ」(佐藤さん)

GPSは持って行かない。位置の確認は地図とコンパスのみ

 ジャコウウシの写真は「道路から4、5日、奥まで行って出合った群れ」だと言う。

 一回の撮影期間は2週間前後(それ以上だとカメラのバッテリーか食料がなくなってしまう)。背負う荷物は撮影機材を含めて40、50キロほど。できるだけ荷物の重量を減らすためGPSは持って行かない(電池の重さがばかにならないのだ)。位置の確認は地図とコンパス(方位磁石)が頼りとなる。

「動物と出合うのは難しいですね。何にも出合わない日もあります」

 どう考えても撮影効率は悪そうだ。だからこそ、事前の情報収集には時間と手間をかけるという。

「彼らが自然に生きるフィールドをどうにかして撮りたいと思っていますから、ずーっと地図とにらめっこして、どこから入れるか、常に考えています。ジャコウウシの場合は現地の街でできるだけ聞き込みをして。郊外で出合う車は1時間に1台くらいなんですが、ドライバーにも『どこかで見た?』とたずねて、地形と目撃情報を照らし合わせる。そうすると、入る場所が見えてくるんです」

海岸を数十マイル歩きながらヒグマを撮る

 山の稜線で出合ったカリブーの写真もひと味違う。背後の山々は緑が少なく、褐色の山肌は中央アジアを思わせる。撮影の様子を聞くと、山岳ゲリラのようだ。

「基本的に相手よりこちらが先に見つけたいんです。『この角度で撮れば絵になるな』とか、先回りして待つことができますから。だからルート選択は視界、つまり情報がいちばん得られるところを選ぶんです。谷の深いところはなるべく歩かない。得られる情報が少ないし、ばったり出合っても対処しづらいですから」

 テントは稜線などに設営し、残雪があれば、それを溶かして飲み水にする。同じ場所にとどまるのは2、3泊まで。点々と移動したほうが被写体と遭遇する確率が増す。違った背景で撮れる利点もある。

 ページをめくる。日没後、夕焼け空を背景に干潟のような海辺を歩くグリズリー(ヒグマの亜種)の親子の姿も新鮮だ。

「ヒグマの海辺の撮影ポイントはおおむね決まっているんですが、それでは同じような写真になってしまうので、海岸を数十マイル歩きながら撮ります。そこがほかの写真家にはできないことだと思っていますから」



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