そんなイワヰさんが初めてかぶった帽子は、南海が78年に採用した明るい緑の帽子だった。

『野球帽大図鑑』では戦前から現在までの帽子がイラストで紹介されているが、帽子のシルエットが時代によって描き分けられている。戦前から1960年代までは丸くて浅めのシルエットだったものが、60年代からフロント部分が立った深めとなり、2000年代に入ると丸いフォルムに代わっていく。これは実際の帽子のシルエットの変遷に合わせて描かれている。

 また、帽子の本体には使用している生地の数が8枚か6枚かで「8パネル」と「6パネル」というスタイルの違いがあり、かつて主流だった8パネルは50年代から6パネルに取って代わられるが、その違いまでも描き分けるこだわりぶりだ。さらに帽子マークの描き方にも工夫を加えている。イワヰさんは「刺しゅうのマークは立体に見えるように描いています。おかげで陰影のつけ方を発見しました」と笑う。

綱島さんがベストデザインに選んだ西鉄ライオンズのNLマークは時期によってパターンに変化がみられる
綱島さんがベストデザインに選んだ西鉄ライオンズのNLマークは時期によってパターンに変化がみられる

■ふたりが選んだベストデザインとは?

 今回、綱島さんとイワヰさんに帽子マークのベストデザインを教えてもらった。

 綱島さんが挙げたのは西鉄ライオンズのNLマークだった。このマークは当時の三原脩監督と主力だった豊田泰光選手が話し合って決めたデザインだという。

「三原さんと豊田さんが紙をはさみで切って、それを組み合わせながらいろいろなデザインを試行錯誤して決めたデザインです。数あるデザインの中でも、監督と選手が話し合いながら自らデザインしたのはこれぐらいでしょう。デザインの秀逸さもさることながら、こういった物語があることもNLマークの魅力だと思います」

 西鉄はNLマークの帽子で50年代後半に黄金期を極める。

「面白いのはNとLのマークにはバリエーションがあるところです。初期はLの上にNが完全に乗っていましたが、62年にデザインが変更されLの一部だけが前に出てきます。ところが同じ時期にLが完全にNの上に乗っているパターンもありました。同じデザインでこういった違いが見つかるのも楽しみですね」

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イワヰさんが選んだベストデザインは?